新型コロナウイルスによる肺炎の拡大をできるだけ防ぐため、社会全体が急ぎ取り組まなければならないことは多い。
その筆頭が、テレワークや時差通勤である。
加藤勝信厚生労働相は17日の記者会見で、同省専門家会議の結果を受けて「テレワークや時差通勤などに積極的に取り組むことをお願いしたい」と国民に呼びかけた。
それには企業などの雇用側と働く人双方の協力が欠かせない。呼びかけに呼応する動きが出ていることを歓迎したい。
日本貿易会の中村邦晴会長は19日の会見で、テレワークや時差出勤を推奨し、感染リスクを下げる取り組みを説明した。
どちらも、新型肺炎とは別に、働き方改革のメニューにあがっていた。中村氏は「(今回の感染拡大を)災い転じて福となすとして、働き方改革を進めるいい機会ととらえるべきだ」と語った。
テレワークはもともと、就労人口の減少などによる働き方改革や東京五輪・パラリンピック時の交通混雑の緩和を目的に、政府が企業の背中を後押ししてきた。
職場における感染拡大を減らす効果がある。地震などの非常事態、台風など災害時での導入も想定されてきた。
ただし、仕事の内容からテレワークが難しい人も多いはずだ。時差出勤は、満員電車での感染リスクを下げる効果がある。
新型肺炎の感染拡大を機に、事業継続と従業員を守るという観点から、企業など雇用側は、テレワークや時差出勤の導入に急ぎ取り組んでほしい。
日本たばこ産業(JT)は1月27日付で国内全社員約7500人を対象に、テレワークを推奨する通知を出した。同社は情勢の変化に合わせ、原則週2日だった利用回数の上限を外した。
野村ホールディングスは、1月15日以降に中国本土から帰国した社員は症状の有無に関係なく、中国の出国日から14日間は在宅勤務とした。
テレワークや時差出勤の導入は、その適正な運用が前提となる。勤務場所や労働時間、始業・終業時間を明示した辞令の発行も一案である。人事評価や賃金に不利益を生じさせないように配慮することが、新型肺炎との戦いを有効に進めることになる。制度の定着にもつながろう。