【ニューデリー=岡野祐己】東京五輪で金メダルを目指す世界王者が、アジアの舞台で負けるわけにはいかない。ニューデリーで19日行われたレスリングのアジア選手権男子グレコローマンスタイル60キロ級で、東京五輪代表の文田健一郎(ミキハウス)は決勝まで3試合とも無失点の完勝で優勝を果たした。「一貫して練習してきたスタンド(立ち技)で点は取れていないけど、パッシブ(消極的姿勢)は取られなかった」。しっかり収穫を得て、五輪での第1シードも確実にした。
初対戦のキルギス選手との決勝。巻き投げを冷静にかわし、3点を先制。後半は防御一辺倒の相手にパッシブが課され、勝負あった。
想定していた通り、初戦の2回戦と準決勝は腕をつかまれて頭を密着され、得意のそり投げを封じられた。決まったのは準決勝の1回だけで「悔しい」。それでも、昨年の世界選手権で威力を発揮した寝技のローリングを連発し「世界にそり投げ以外を見せて、スタンドで逃げているだけじゃ駄目だと。他の対策をさせたい」。あえて寝技で攻めたのには投げ技につなげる狙いがあった。
寝て良し、立って良しの文田だが、観客を沸かせる豪快な投げ技にこだわるのは「グレコの最大の魅力」と考えるから。投げにさらに磨きをかけ、いよいよ東京のマットに立つ。