国際情勢分析

「海の安全」どう守る 日本が問われる自助努力の覚悟

今月2日、中東へ向け海自横須賀基地を出港した海上自衛隊の護衛艦「たかなみ」=神奈川県横須賀市(川口良介撮影)
今月2日、中東へ向け海自横須賀基地を出港した海上自衛隊の護衛艦「たかなみ」=神奈川県横須賀市(川口良介撮影)

先の大戦末期の市井の女性の暮らしを描いてヒットしたアニメーション映画『この世界の片隅に』(2016年)の続編、『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』が昨年末に公開された。ミニシアター系での上映から異例の大ヒットとなった両作品の舞台となっているのが、広島県呉市だ。当時の帝国海軍の一大拠点だったこの町に注目が集まっているのを機に、海洋国家・日本が守るべきものを考えてみたい。(外信部 平田雄介)

昭和20年8月15日の終戦後から間もなく、日本列島周辺の海域に数えきれないほど設置された機雷を取り除く「掃海任務」が始まった。

帝国海軍の衣鉢を継ぎ、しかし「専守防衛」のための部隊に生まれ変わった海上自衛隊が呉市に置く史料館「てつのくじら館」の常設展示は、海自の原点となった掃海任務の重要性を伝えることから始まる。

四方を海に囲まれ、資源に乏しい日本は、国民の暮らしに欠かせない多くの物資を海外からの輸入に頼らざるを得ない。展示は、そうした物資を運ぶ商船が自由に往来できる「平和で安全な海」を保つことこそ、海自最大の使命だと教えてくれる。

暮らしの必需品は数あれど、全般にわたって生活を支えるのがエネルギー資源だ。電気なしには電車もエレベーターも動かない。テレビやパソコンも使用できず、家々の明かりも灯らない。ガスがなければ多くの家庭で風呂を沸かせず、料理ができない。石油がなければ車や飛行機、船を動かす燃料が作れない。

東日本大震災の折、東京電力福島第1原発の事故をきっかけに首都圏が電力不足に陥り、多くの人の暮らしを直撃したのが9年前。以来、原子力に対する風当たりは強い。そうかといって、太陽光や地熱といった再生可能エネルギーで国民の暮らしと経済活動を支える目途も立っていない。

日本の一次エネルギー供給の約4割を占める石油はまさに「死活的に重要」(菅義偉官房長官)だ。

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