7月の任期満了に伴う鹿児島県知事選は再選を目指す現職に加え、保守系の新人と元職の計4人が無所属での立候補を表明した。乱立気味の展開に自民党県連は対応に苦慮する。一方、前回選で論戦の的となった九州電力川内原発(薩摩川内市)に関する議論は今のところ争点に浮上しそうにない。
立候補を表明しているのは、現職の三反園訓氏(62)、鹿児島大特任助教の新人、有川博幸氏(61)、前九州経済産業局長の新人、塩田康一氏(54)、前知事の元職、伊藤祐一郎氏(72)の4氏。有川氏を除く3氏は自民、公明両党に推薦を求めた。
自民党県議団は昨年末から対応について協議を重ねた。三反園氏は1期目で知名度も高く優位と目されるが、評価は割れる。
前回は脱原発を掲げ反原発団体と政策協定を結び、野党の支援を受けて当選した経緯があり、推薦には慎重論が根強い。
ただ、就任直後の平成28年6月、自民党県議団執行部との非公開会合でエネルギー政策について「自民党と方向性は同じだと思います」と発言し、29年2月の県議会で「(九電に)現状では強い対応を取る必要はない」と答弁するなど稼働容認へ転じた。自民県連会長の森山裕国対委員長は「当初はエネルギー問題で心配したが、余計だった。今は相反しない」と評価する。
原発について、新人3氏も積極的に争点にする姿勢を見せない。塩田氏は「現時点で重要な電源だが、必要に応じて見直す」との立場だ。前回選で川内原発に関し安全性を主張した伊藤氏は「候補者が出そろった段階で改めて説明したい」とし、有川氏は将来的には停止すべきだと主張する。今後も候補者間の論戦に発展するかは微妙な情勢だ。
県連内には、12月に任期満了を迎える森博幸鹿児島市長(70)の待望論がある。現在4期目で、これまで与野党の推薦を受けてきたため「幅広い結集が可能だ」(幹部)と期待が膨らむが、森氏は態度を明らかにせず、動向が注目される。
対する野党は候補者選びが進まない。前回は旧民進、社民両党が三反園氏を支援したが、就任後は原発政策などをめぐって対立が深まり、対抗馬擁立を模索する。
野党系県議は「独自候補の擁立は難しい。名乗り出た候補の中から、政策を比較して支援先を決めたい」と苦しい事情を明かす。原発については「今すぐ止めるのは難しい」とした上で「脱原発への将来的な道筋を描けるかどうかを見極めたい」と語った。