世界のかたち、日本のかたち

トランプ氏への過小評価 大阪大教授・坂元一哉

米ホワイトハウスで記者会見するトランプ大統領(UPI=共同)
米ホワイトハウスで記者会見するトランプ大統領(UPI=共同)

新年1月3日、米国はイラン革命防衛隊の実力者、ガセム・ソレイマニ司令官を無人機からのミサイル攻撃で殺害、イランの海外工作活動に大打撃を与えた。世界の専門家を驚かせる行動であり、一時は報復の連鎖によって両国は大戦争に至るとの懸念もあった。だがいまのところイランの反撃は、そうならないよう抑制されたものにとどまっている。

当然のことかもしれない。もし大戦争になれば、両者の軍事力の格差から見て、それは確実にイランの破壊で終わるからである。

1月15日、米国と中国は貿易協定の第1段階合意に達した。その内容はかなり一方的なものである。中国が今後2年間で米国からの輸入を約22兆円増やし、米国が不公正と批判する貿易慣行の一部是正を約束したのに対して米国は、為替操作国の認定解除などシンボル的な譲歩はしたものの、関税引き下げは一部にとどまった。しかも、中国が約束を守るかどうかを監視し、守らない場合には再び引き上げるという。

一昨年の夏から始まった米中の関税引き上げ競争については、米国経済に与える悪影響を心配する専門家も多かった。だがいま、米国経済は絶好調。両国の経済「戦争」は米国有利に展開している。

「米国を再び偉大に」というスローガンを掲げて、トランプ大統領が米国のかじ取りを始めてから3年になる。この間、大統領はその政策だけでなく、政治姿勢や手法にも強い批判を浴びてきた。ロシア疑惑、ウクライナ疑惑を言い立てて、大統領の弾劾による罷免を狙う民主党の動きも続いている。

しかし大統領はひるむことなく、2016年の大統領選挙で約束したことを次々と実行してきた。製造業も含めた雇用の大幅拡大など、当時は、とても実行できまいと専門家たちが考えていた約束もある。

最大の公約「米国を再び偉大に」の実行はどうか。これは「偉大」の意味にもよるが、この3年間、世界はさまざまなことで、米国が世界の覇権国であり、世界は米国を中心に動いていることを実感させられてきた。米・イラン関係、米中関係における先月の展開はその最新の事例といえよう。

トランプ大統領は、米国が持つ巨大な軍事力と経済力を遠慮会釈なく使って「力を通じた平和」を実現し、米国をさらに強大な覇権国の地位に押し上げようとしている。特に、シェールガス革命で増大した経済力を背景にして、関税の引き上げと、二次制裁(制裁対象国と取引する企業も制裁)をいとわぬ経済制裁を縦横に活用するのがトランプ流である。

米国外交界の長老、キッシンジャー博士は2年前、「トランプは歴史に時々現れて一つの時代を終わらせ、古い時代の見せかけを諦めさせる人物の一人」かもしれないと評している。正しい評価かどうかの判断にはもう少し時間がいるが、過小評価が危険な米国大統領であるのは間違いない。(さかもと かずや)