主張

新型肺炎 国民の保護に覚悟を示せ

 新型コロナウイルスによる肺炎では、国内でも人から人への感染が確認された。また政府のチャーター便で中国湖北省武漢市から帰国した第1便の邦人のうち3人が検査で陽性となった。

 政府は国民の保護を徹底すべきである。それは新たな感染を防ぐ国際貢献にもつながる。

 安倍晋三首相は参院予算委員会で「国民の命と健康を守ることを最優先に、やるべきことは躊躇(ちゅうちょ)なく決断したい」と述べた。だが対応はまだまだ中途半端であり、後手に回っている印象を与える。

 第1便で帰国した日本人のうち2人は一時ウイルス検査を拒否して帰宅した。発熱などの症状がなかったためとされるが検査で陽性となった2人にも症状はなかった。安倍首相は「法的な拘束力はない。人権の問題もあり踏み込めないところもある」と述べた。

 感染を防ぎ中傷から守るためにも検査は必要だった。無症状の人からも陽性反応が出ている。政令と現実の乖離(かいり)を埋めるべく政府の責任で超法規的に検査を受けさせるべきだった。政府は新型肺炎を「指定感染症」に定めたが、2月7日の施行後も対象は感染が確認された場合に限られ、確認がまだの人には強制力がない。

 第2便以降は検査への同意を搭乗の条件としたが、これもおかしい。原則は無条件の全員避難である。その上で検査への同意を粘り強く説くべきではないか。

 チャーター便の航空運賃、約8万円を徴収することには、自公両党からも批判がある。

 菅義偉官房長官は「内戦や武力攻撃など本人の意思にかかわらず保護の観点から退避をお願いせざるを得ない場合を除き、通常はエコノミー正規料金の負担をお願いしている」と述べた。

 では、払えなければ乗せないのか。国民を守る国の意思を示すためにも国が負担すべきである。

 武漢市には、重度の肺炎を発症している60代の邦人男性がいる。すでに発熱などの症状がある邦人も、民間のチャーター便には乗れない。これらの邦人についても、帰国させ国内で治療する必要がある。移送には医官を同乗させた自衛隊機を使用すべきである。

 国民の保護という最優先の問題である。中国側に自衛隊機の受け入れを交渉するのも政府の責任である。事態は深刻である。これに対峙(たいじ)する政府の覚悟がみたい。

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