「減胎手術」ルールもなく、表面化もせず…大阪地裁判決で問われた問題

 原告の女性は判決後のコメントで「私の場合はわらにもすがる思いで減胎手術を決断しました」とし、「判決結果は残念だったが、ルール整備への一歩となれば」と話した。

■親の苦労、社会で支えるシステムを

 双子などの「多胎児」は年間約2万人前後誕生しているが、育児負担の大きさから心身ともに追い込まれてしまう親も少なくない。専門家は「社会全体で支えるシステムの構築」を呼びかける。

 民間団体「多胎育児のサポートを考える会」などが昨秋、多胎家庭に行った調査では、育児に追われて地域社会から孤立していく親たちの姿が浮かびあがった。「子供にネガティブな感情を持ったことがあるか」の質問には約9割が「ある」と回答。必要なサポート(複数回答)としては「家事育児の人手」が約7割、「金銭的援助」が約6割に上った。

 多胎育児の支援団体や研究者らでつくる「日本多胎支援協会」の報告では、多胎家庭の子供の虐待死頻度は単胎家庭の2・5~4倍とも推計されている。

 ただ、多胎育児に対する行政支援には地域格差がある状況だ。厚生労働省は令和2年度、育児支援を担うサポーターの派遣などに乗り出す構えで、取り組む自治体に費用の半額を補助する方針を示している。

 十文字学園女子大の布施晴美教授(小児看護学)は「多胎家庭の孤立を防ぐためには、社会全体で支援していくシステムが重要になる」と指摘。「行政は相談体制の見直しのほか、支援にまわる人たちの輪をつなぐための方法を模索し、人材育成などにも力を入れていく必要がある」と話している。

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