日本の未来を考える

学習院大教授・伊藤元重 今年は大きな変化の年?

ソレイマニ司令官殺害に対する抗議デモで星条旗を燃やす人々=1月3日、イラン・テヘラン(AP=共同)
ソレイマニ司令官殺害に対する抗議デモで星条旗を燃やす人々=1月3日、イラン・テヘラン(AP=共同)

今年は年初から国際経済に大きな影響を及ぼしそうな出来事が続いた。イランを中心とした中東の不安は石油価格を通じて世界経済の大きなリスク要因となる。台湾の選挙は予想通りであったとして、この後の台湾経済の行方や中国経済との関係は日本経済にも大きな影響を及ぼす可能性がある。リーマン・ショックから10年、欧州のギリシャ危機はあったものの世界経済は比較的平穏であった。ただ、過去を振り返ると5年から10年に1度は世界のどこかに経済危機が起きていることを考えると、2020年に大きな波乱が起きないという保証はない。

危機を予想することはできないが、足元で起きている大きな潮流の変化について認識することの意義は大きい。世界経済の流れはどちらに向かっているのか、中長期の視点で考える必要がある。

私は、2000年から01年が最近の大きな転換点であったと考えている。1989年にベルリンの壁が崩壊し世界は民主主義と市場経済の流れに収斂(しゅうれん)するとみられていた。実際、90年代はインターネットなどの広がりの期待で米国の経済は順調だった。その流れが変わったのが2000年のITバブルの崩壊だ。米国経済に対する悲観論が広がり始める。そして01年には米中枢同時テロが起きる。米国が世界の平和を支えるという幻想は崩れてしまった。

経済的にも、この2つの出来事によって、米国主導で世界経済が成長を続けていくという流れは不透明になった。市場も低迷した。そうした中で出てきたのが、BRICS論である。これからは新興国が世界経済の成長を引っ張り、これらの国が世界の中で重要な地位を占めるようになるというものだ。いみじくも01年の年末に中国はWTO(世界貿易機関)への加盟を果たしている。中国がグローバル経済を舞台に成長を続ける起点となる年だ。この年の中国のGDPは1・3兆ドルだったが、現在はそれが10倍以上の14兆ドルにまで拡大している。

弱くなる米国の政治的な影響力、拡大する新興国とりわけ中国の膨張、それがこの20年の流れだ。そしてそれがいま、大きな壁に来ている。中国などからの輸出の拡大に対して、米国で保護主義の声が強まっている。

これはトランプ大統領だけではない。トランプ氏が保護主義のステージ1であるとすれば、民主党のウォーレン氏やサンダース氏は保護主義ステージ2になるかもしれない。今の中国と米国がWTOの仕組みの中で共存するのは難しいようにも思える。中東についてここで詳しく考察するスペースはないが、米国の影響力が弱くなっていることは明らかだ。

新興国の規模拡大と米国の影響力の低下の中で、世界経済はどちらに向かっていくのだろうか。グローバル化の流れが後退することはないだろう。急速に進む技術革新が、グローバル化の後退を許さない。しかし、グローバル経済はとても不透明になっている。今年は大きな変化の年になるかもしれない。(いとう もとしげ)