「5Gの電波」は人体に悪影響がある? 専門家が出した結論

これがふたつの懸念を生んだ。まず、従来の周波数帯と比べ、ミリ波の信号はより危険である可能性があること。そして、アクセスポイントが増やされて住宅との距離が縮まることで、人々が4Gサービスを使っているときより多くの電磁波にさらされる可能性があることだ。

ミリ波への完全切り替えには時間がかかる

しかし、通信キャリアが5Gサービスの提供で用いる周波数帯は、ほかにももある。ミリ波をメインで利用することを予定しているわけでもない。

例えば、現在米国で最も普及している5GサービスはTモバイルが提供しているものだが、これはテレビ放送で利用していた低周波数帯を使っている。これに対してスプリントのサービスは、4Gに使う「中周波数帯」の一部を5Gに転用したものだ。ベライゾンとAT&Tは、ミリ波に基づくサービスを提供しているものの、利用可能な場所はごく一部に限られている。

ワイヤレス業界が5Gの周波数帯として中~低周波数帯を中心に据えているのは、大量のミリ波のアクセスポイントを展開するには時間がかかり、費用がかさむからだ。つまり5Gは、ラジオ、テレビ、衛星通信、モバイルサービス、Wi-Fi 、Bluetoothなどで数十年にわたり利用されてきた周波数帯を、今後も使い続けることになる。

また、ミリ波を利用できるエリアを通信キャリアが増やしたとしても、それほど心配する必要はない。

電波、可視光、紫外線は、どれも電磁スペクトルの一部だ。そして、このスペクトルのうち高い周波数帯、「電離放射線」と呼ばれる部分にはX線やガンマ線が含まれている。分子結合を破壊したり、がんを引き起こしたりする可能性のある恐ろしい放射線だ。

一方で、可視光やミリ波、その他の電波は非電離放射線と呼ばれ、分子結合を破壊することはない。従来の放送用周波数帯よりは高い周波数だが、可視光ほど高くはなく、短波紫外線やX線、ガンマ線など、電離放射線と比べれば、はるかに低い周波数である。

コンサルティング企業のRambollでリスクアセスメントを担当する毒物学者のロバート・デモットは、次のように指摘する。「5Gという名の下に周波数を変えても、それによって生物学上の健康要因であるエネルギーの部分が変わるわけではありません」

また、ピッツバーグ大学で原子物理学の教授を務めるエリック・S・スワンソンによると、日常的な光源である可視光は、ミリ波やその他の携帯電話用の周波数帯よりも周波数・電磁エネルギーがともに高いという。

携帯電話の健康への影響をめぐる長い議論

とはいえ、非電離放射線を大量に浴びてもまったく副作用がないわけではない。電磁エネルギーは熱を生じさせるが、これが電波による「唯一の」健康上の懸念だとデモットは言う。

この説は、ミリ波などの非電離放射線が与える生物学的影響についての、数十年に及ぶ研究によって裏付けられている。米電気電子学会(IEEE)の国際電磁安全性委員会は2005年、電波周波数帯が与える生物的影響に関する査読済み論文1%2C300本以上をベースに報告書を発表した。ここでは、「熱に関連するもの以外で、健康への悪影響は見出されなかった」と結論づけられている。

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