主張

香川のゲーム条例 子供守るルールは必要だ

 スマートフォンを使ったオンラインゲームなどへの依存を防ぐため、香川県議会は子供のゲームの利用時間制限を含む条例制定を目指している。長時間ゲームにのめり込めば、心身に悪影響が出ることが分かっている。そうした害から子供を未然に守るため、一定のルールは必要である。

 条例案によると、18歳未満の子供のゲームの1日の利用時間を60分(休日は90分)までとする。またスマホの利用は中学3年までは午後9時、高校生などは午後10時までとする。これを守らせるよう保護者に努力義務を課す。

 当初、利用時間の制限はスマホ全般にしていたが、とくに依存の危険性が指摘されるオンラインゲームに絞って修正した。

 それでも反対がある。

 スマホの使い方といった家庭の教育に行政が口を出すのかという批判も相変わらずだが、批判の矛先を誤っていないか。

 条例の目的は、あくまで依存症対策を総合的に進めることだ。各自治体、学校、家庭と連携した啓発活動を進める県の責務などが明記される。県議会は「ネットやゲームを全て否定し、子供がゲームをする権利を侵害するものではない」と説明している。

 保護者が適正な使い方も教えず、ルールなくスマホや携帯電話を買い与える方が問題がある。家庭への「介入」と批判する前に、親の世代が子供のしつけもそっちのけに、スマホの画面から目を離せない現状はないか。胸に手を当てて考える必要があろう。

 「60分」の制限は、同県の学力調査で、スマホなどの利用時間が1時間を超えると成績が下がる傾向があるからだという。

 ゲーム依存は成績だけでなく、健康被害や生活を破綻させる深刻な事例が報告されている。世界保健機関(WHO)はゲーム依存症(障害)を、ギャンブル依存症などと同様、国際疾病分類で病気と位置付けた。厚生労働省研究班の調査では中学、高校生の1割強がネットへの依存性が高く「病的使用」ともされている。

 ネット上で対戦するゲームが発達し、のめり込みやすい背景もある。ゲームで過度の刺激を長時間受け、脳の損傷や萎縮が起きる研究報告もある。自分からやめられないのが依存症の怖さだ。

 危険性を周知し、対策を取る上で香川の試みを評価したい。

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