家庭にカレー届けたい
2002年、中国・上海。市場(いちば)を歩き回ることから調査は始まった。山積みのジャガイモ、ニンジン、つり下げられた肉の塊、調味料…。どんな種類があり、どんな味が好まれているのか。中国でカレールーの「バーモントカレー」を売り出すため、ハウス食品が同年に立ち上げた上海事務所では「何もかも手探りだった」と堂上(どううえ)貴幸(44)=現ハウス食品グループ本社経営企画部次長=は振り返る。
当時、中国は人件費の低い製造拠点として注目されていたが、ハウスは「巨大なマーケットとみていた」と堂上は明かす。
消費者の反応を探るため、商社と組んで1997年に上海市内にカレーのレストランを開店。日本から持ち込んだカレーソースを使い、価格は1皿40人民元ほどに設定した。当時の為替レートで600円相当だが、物価水準を考慮すると感覚的には3千~4千円といったところ。中国では、白いご飯の上に何かをかけて食べるという習慣がなく、当時はスプーンも一般的ではなかった。
それでも日本のカレーは話題となり、受けた。休日には500~600人が来店し、タクシーで乗り付ける人も。デートスポットとしても人気を呼んだという。店の内装や店員の制服は高級感を出し、トイレにまでこだわったことも奏功したのかもしれない。
日本では家庭の味が、中国ではぜいたくな料理に化ける。だが、ハウスは「飲食店を通じてではなく、家庭の中に届ける」ことを目標に掲げた。
その第一歩を踏み出した市場で、堂上たちは日本との違いを目の当たりにすることになった。日本のものよりも水っぽいムラサキタマネギが一般的。肉も鶏、豚が中心でバーモントカレー開発でメインにしていた牛はややマイナー。