北方領土付近で相次ぐ日本漁船の連行 「安全操業」の有名無実化懸念

 ロシア当局は、船内から操業日誌に記載されていない漁獲物が見つかり「日露の漁業協定違反を確認した」などと主張。歯舞漁協は、禁止されているカレイの船上加工を当局に指摘されたと説明したという。

 一連の事態を受けて、北海道は漁業関係者に操業ルールを改めて周知した。

■  ■

 日露間には北方領土問題で平和条約が締結されておらず、国境を定める両国の協議はできていない。根室東端の納沙布(のさっぷ)岬から歯舞群島の貝殻島までは4キロにも満たない。

 北方四島と北海道東方との中間ラインは、単にロシア側が主張する「国境線」にすぎないが、海上保安庁の巡視船などは、その「いわゆる暗黙のライン」(海保関係者)を挟んで、ロシアの警備艇との対峙(たいじ)を強いられている。

 加えて、この海域は世界有数の水産資源の宝庫とされる。このため、これまでにも北方領土に近づく日本漁船がソ連やロシアの警備艇に拿捕されるケースは相次いでいた。

 高出力のエンジンを並べて短時間で暗黙のラインをまたいで漁をして戻る「特攻船」とよばれる漁船のほか、日本側の情報などを提供する見返りにソ連当局などから漁を許される「レポ船」も存在していたとされる。

 ソ連・ロシアは、こうした密漁に強硬な態度で臨んできた。拿捕は平成元年~10年で66隻に上り、こうした状況を受けて、10年には日露で「北方四島周辺水域における日本漁船の操業枠組み協定」が締結された。

会員限定記事会員サービス詳細