関東では一般的に、お汁粉はあんこの汁に餅などを入れたもの、ぜんざいは餅に汁気がないあんこを添えたものを指すことが多い。一方、関西では、お汁粉、ぜんざいいずれも汁気があって、お汁粉はこしあん、ぜんざいは粒あんを使ったものを指す場合が多い。
それぞれ語源は異なると考えられている。ぜんざいは一説には、島根県の出雲地方で行われる「神在祭(かみありさい)」で振る舞われた「神在餅(じんざいもち)」がなまったといわれる。
お汁粉については東西いずれも、あんこに水気を加えて汁にするから、「見た目通りの名称。(ぜんざいが)西から東へ伝わる際、どこかで呼び名が変わったのかもしれません」と三浦さん。「いずれにせよ、お汁粉やぜんざいは日本の食生活に深く根付いてきました」と話す。
■栄養も豊富
あんこの材料は小豆。名寄(なよろ)市立大学(北海道名寄市)の加藤淳教授(食品科学工学)は「豆類は古くから日本人の健康を支えてきました。特に野菜が手に入りにくかった冬場には、貴重な栄養源だったといえます」と話す。
加藤教授によると、小豆の主な成分は炭水化物だが、食物繊維やポリフェノール、ビタミンB1などの栄養成分に加え、鉄分やカリウムといったミネラルも豊富に含んでいる。「一部の成分は水溶性なので、お汁粉やぜんざいは、小豆の栄養を残さず摂取できる理にかなった食べ方。煮汁にも栄養があるので、渋みが気にならなければ、小豆をゆでこぼす渋きりをせずに作っていただきたい」という。
あんこの愛好者でつくる「日本あんこ協会」会長で、「にしいあんこ」という名前で活動している西井成弘(なるひろ)さん(37)は「和菓子は常温か冷たいものが多いが、ぜんざいやお汁粉は温かさを楽しめるのが大きな魅力」。さらに「温かく甘いものを食べれば、冷えた体がほっと緩んでリラックスできるので、この時期にぜひおすすめしたいです」と語る。
餅が喉に詰まらないよう注意しながら、日本人が古くから親しんできた滋味をいただきたい。