最近注目が高まっているジビエ(野生鳥獣)料理。もともとはヨーロッパで貴族の伝統料理として発展してきた食文化とされる。このジビエ肉のインターネット通販を行っている会社が、広島市中区にある「Forema」。だが、同社が扱っているのは普通のジビエ肉だけではない。イヌなどのペット用の餌も多数取りそろえているのだ。
廃校を物流センターに
広島県北西部に位置する山深い集落の一角。2階建ての木造校舎にForemaの小泉靖宜(やすのぶ)社長(42)を訪ねた。
「以前は広島市内の共同冷凍庫を使っていましたが、取扱量が増えてきて手狭になったので、移転先を探していました。すると、知り合いから『廃校が3つほど余っている』と聞いたのがきっかけです」
同社は昨年12月、元は同県安芸太田町立小学校だった場所に「フォレマ物流センター」(同町)を開設した。
職員室だった場所は事務所とし、隣の元保健室と元資料室と合わせて1階部分の計3室を物流センターとした。このうち元資料室は、全国から入荷されるジビエ肉を保管する冷凍庫に改装。マイナス20度に保たれた室内には、イノシシやシカの肉が整然と並んでいた。
無添加ペットフード
日本ジビエ振興協会のホームページによると、ジビエは狩猟で得た天然の野生鳥獣の食肉を意味するフランス語。フランスなどではジビエ料理は上流階級の貴族しか食べられないような高級料理だったという。
小泉社長がジビエ肉を活用したビジネスに乗り出したのは平成28年。農作物に被害をおよぼすシカやイノシシなどの野生動物は年間約100万頭も駆除されているが、うち9割が廃棄されていることを知って、オンラインマーケットを開設した。「廃棄物を減らしたい気持ちが強かった。無益な殺生を有益なビジネスにつなげるために、流通の仕組みを模索してきました」
29年に株式会社として法人化し、30年5月からはジビエ肉を無添加のペットフードとして宅配する「ペットさん定期便」をスタート。顧客は東京都や神奈川、兵庫、福岡の各県などで計約400人を抱えるまでに広がっている。