生徒らもeスポーツを通じて積極的に登校するようになるなど、少しずつだが立ち直り始めている。中学1年時に人間関係が原因で引きこもりになった大阪府東大阪市の男子生徒は「人間関係を構築するのが苦手だったが、人と関わる楽しさを知った。引きこもりのときのストレス発散の道具で逃げ道でしかなかったゲームが、今では自分の希望」と説明する。いじめが原因で1年半以上不登校だった兵庫県川西市の女子生徒は「大学に進学するか、eスポーツに関わる仕事に就くために専門学校に行くか。毎日わくわくしながら悩んでいる」と目を輝かせた。
同校の福田和彦部長は「生徒らにはeスポーツで自信を取り戻してもらい、将来は社会で活躍する人間に成長していってほしい」と話している。(宇山友明)
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不登校や引きこもりの社会復帰を後押しする一方、eスポーツは過度なプレーが未成年者のゲーム依存を助長する危険性があるとも指摘されている。昨年5月には世界保健機関(WHO)が「ゲーム障害」を疾病と認定。普及に向けて逆風が吹く中、ゲーム依存を防止するための研究を行うeスポーツ団体も現れた。
昨年7月に関西の学生らで結成された「学生e-sports連盟」は、大学間の大会を企画する一方、京都大大学院医学研究科の村井俊哉教授の協力を受けながらゲームによる健康被害についての研究を実施。ゲーム依存を未然に防ぐ方法と、依存症を発症している未成年者が社会復帰をするための手段が現在の研究テーマだ。今後はゲーム障害を予防するための制度設計にも取り組む予定で、小澤行央副理事長は「eスポーツがネガティブなものに捉えられないように、研究を進めていきたい」と話した。