高給が魅力
データサイエンティストが選ばれる理由は何か。
まず、最先端の職業というイメージが挙げられる。「米国のGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アップル)各社が、ビッグデータを活用して新しいビジネスを創出したことで、データを扱う仕事は知的なイメージも伴いとても魅力的に映っている」(同)。
次に高給が期待できる点。それは転職者の求人サイトで一端がうかがえる。想定年収が「1200万円から」の大手製造業や、「1100万円から」のアパレル企業など、高給の提示がめじろ押しだ。
さらに、希望すればフリーのデータサイエンティストとして働ける点もある。転職サイトにはフリーでも相当額稼げる募集が掲載されている。フリーを対象とした「BIG DATA NAVI」という募集では、「月に150万円から」と、月給単位で高給の募集が掲示されている。
同サイトを運営するエッジコンサルティング(東京)のシニアマネジャー、坂西茂さんは「高給でフリーでも来てほしいという会社がたくさんある。スキルの高い人ほど自由な働き方とスキルを磨けるプロジェクトを求めてフリーで働く傾向がある」と語る。
現在、東大には専門学部はないが、養成講座などを開講している。「東大なら、統計学などを学んでいる理系の大学院がデータサイエンティストの有力候補になる」。研究室の事情に詳しい坂西さんはこう語る。
東大生が自由な働き方を求めているのは、終身雇用という日本企業の慣習を続けることが難しくなっているからだ。データサイエンティストなら、自らの頭脳と腕を頼りに自由な働き方も選べる。そうしたキャリアプランを描けるというわけだ。
ただ、相当な知的レベルとビジネスセンスが同時に求められる。ビジネス創出の支援にもかかわる点で、データ分析や処理を扱うデータアナリストとは異なり、データ分析の能力を有している点では一般のコンサルタント職とも違う。一線で活躍できるような即戦力になるにはハードルが高い。
大学も本腰
東大に追いつき追い越そうと、他大学もデータサイエンティストの養成を始めている。滋賀大は平成29年度から、専門学部として全国初となる「データサイエンス学部」を新設。横浜市立大も専門学部を開設した。東工大は今年4月から、全大学院生を対象にデータサイエンスとAIの教育を行うことを打ち出した。
数年後にこうした専門教育を受けた学生らが社会に出る。就職サイトのある担当者は「近い将来、大学生の人気トップの職業になるだろう」と予想している。
(大家俊夫)