ところで、私も「四十肩」を患ったことがある。白衣を着ることも困難となったために肩甲上神経ブロックをしてもらった。その効果は劇的であった。翌朝の通勤時には吊(つ)り革を持てるようになったのである。
痛みがとれて、以前はあたりまえであった日常動作が、再びできたときの喜びはひとしおである。患者さんが、ご自分で髪をばっちりセットして受診されればしめたものである。「洗濯物が干せたんです」「久しぶりに布団を上げることができちゃって」と、瞳を輝かせながら報告してくれたならば、医者の本懐と言える。
◇
【プロフィル】森本昌宏(もりもと・まさひろ) 大阪なんばクリニック本部長。平成元年、大阪医科大学大学院修了。同大講師などを経て、22年から近畿大学医学部麻酔科教授。31年4月から現職。医学博士。日本ペインクリニック学会名誉会員。