話の肖像画

福岡ソフトバンクホークス球団会長・王貞治(79)(1)「国を背負う」ということ

(川口良介撮影)
(川口良介撮影)

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《2020年、東京五輪イヤーが幕を開け、スポーツというツールで世界と戦う。そんな平和の祭典にはおのずと国を背負うということが介在する。06年3月、第1回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)でキューバを破って世界一に輝いた。ホークスの監督兼務で「JAPAN」を率いて感じたことは、国を背負うことで生まれるパワーの大きさであった》

第1回ということもあり、他のスポーツの国際大会に比べ、海のものとも山のものともわからない大会でした。当時、野球はプロを含めての国際大会がほとんどなかった。最初は僕も含めて選手たちも「どうなるんだろう」という不安もあったと思いますが、そこは不思議なんだね。選手たちは日の丸をつけるとガラッと変わったんです。自分のことを捨てて、やるべきことをやり、国のためとか、犠牲的な精神という素直な気持ちで取り組んでいた。日の丸をつけた選手たちの心意気を見た気がしました。

あの大会は鮮明に覚えてますね。米国での2次リーグで1勝2敗と追い詰められ、準決勝進出へ崖っぷちだった。ところが同組のメキシコが米国を破り、大会規定によって準決勝に進んだ。相手は再び韓国。1次、2次と韓国には連敗していた。「同じ相手に3度も負けるわけにはいかない」と鼓舞し、選手が応えてくれました。それまで不振で控えにいた福留(孝介外野手、当時中日)が0-0で迎えた7回に代打2ラン。韓国に雪辱した。さらに決勝のキューバ戦では、2次リーグの韓国戦でミスした今江(敏晃三塁手、当時ロッテ)が初回にタイムリーを放った。彼はミスしたことで「このままでは日本に帰れない。帰っても生きていられない」と発言したそうですが、土壇場で力を見せてくれた。