56年前のNHK紅白歌合戦は、有楽町の東京宝塚劇場で行われた。今、紅白をやっているNHKホールどころか放送センターも影も形もなく、代々木はワシントンハイツと呼ばれた米軍人と家族が住む「租界地」だった。
▼前回東京五輪の招致を中心に描いた大河ドラマ「いだてん」は史上最低の視聴率で話題になったが、内容は悪くなかった。ワシントンハイツが東京五輪の選手村として日本に返還される話も胸にズシリときた。
▼選手村は当初、広大な米軍用地があった埼玉県朝霞が有力だった。それを覆したのは、メイン会場の国立競技場に隣接するワシントンハイツこそ選手村にふさわしい、と米国を説得した先人の熱情であり、五輪なかりせば、代々木の風景は別のものになっていたかもしれぬ。