埼玉大の学生とJR東日本大宮支社が連携し、より快適な鉄道の利用を目指す「課題解決型インターンシップ」が成果を上げている。3年前から同社が抱える課題を解決するため、学生が新たなサービスや商品を提案。すでに採用事例も出ている。学生にとっては就職前にビジネスの現場に接する機会となり、同社にとっても新たな視点を持ったサービスを得られるメリットがある。(黄金崎元)
今月19日、埼玉大の学生らがJR大宮駅で自らが提案したサービスについての聞き取り調査を行った。学生らは熱心に利用者の声に耳を傾け、メモを取っていた。
埼玉大とJR東日本大宮支社は平成27年に埼玉の沿線地域の持続的な発展を目指し、包括連携協定を締結した。課題解決型インターンシップはその一環で、3年前から行っている。
3回目となる今年は約30人の学生が参加。9月からグループディスカッションを始めた。今回は「鉄道輸送障害時の情報提供」「駅や車内でのマナー」をテーマに5つのグループに分かれ、それぞれが具体的な提案内容を決定。12月から大宮駅などで実証実験が行われている。来年2月に最終提案を行う予定だ。
学生から提案されたサービスの一つに駅のトイレ内に列車の走行位置が分かるJR東日本アプリを告知するポスターの掲示がある。ポスターのQRコードからアクセス数を集計し、効果を検証するという。
聞き取り調査を行った同大1年の坂巻ななみさんは「実際に駅に来て気付くことが多かった。字が大きい方が良いと感じた。ディスプレーに気付いてもらう工夫も課題」と話した。
また、駅や車内マナーのサービスでは少しでも痴漢被害を減らすため、加害者側にスポットを当てたポスターの掲示や車内放送を流す案などが提案された。痴漢被害の多い埼京線内の駅や車内で12月から実証実験が行われている。
今年で3回目を迎えた課題解決型インターンシップから、すでに新商品も生まれている。昨年のテーマは県産の食材を活用したお土産づくりで、小麦お菓子の「つむぎや」(入間市)とお茶の「岡野園」(さいたま市見沼区)と焼き菓子を共同開発した。12月に大宮駅のイベントスペースでお披露目され、つむぎやで販売されているという。
課題解決型インターンシップについて、埼玉大の石阪督規教授は「課題を解決する実践的な機会で学生の将来にも役立つ。今年で3回目になり、精度も上がってきた。さらに利用者の利便性が高まるサービスや商品の採用実績を増やしていきたい」と意気込む。
一方、埼玉大との取り組みについて、JR東日本大宮支社サービス品質改革室の奥谷健司氏は「お客さまの視点に立って、われわれの気付かないところを情報収集してくれている」と話す。机上の議論ではなく、現場目線の実践的な企業と大学の連携が双方に与えるメリットは大きく、産学連携の新たな可能性を示している。