世界のかたち、日本のかたち

日米同盟の公正な分担 大阪大教授・坂元一哉

日米貿易協定締結で最終合意し、合意文書に署名した安倍首相(左)とトランプ大統領=9月、米ニューヨーク(共同)
日米貿易協定締結で最終合意し、合意文書に署名した安倍首相(左)とトランプ大統領=9月、米ニューヨーク(共同)

臨時国会で新しい日米貿易協定が無事承認され、来年1月発効の運びになった。このことが新時代の日本外交にとって持つ意義は大きい。

「米国を再び偉大に」のスローガンを掲げるトランプ米大統領は、「冷戦後」の米外交政策の多くを失敗とみなし、それらを「アメリカ・ファースト」の原則で是正して、米国と世界との関係をポスト「冷戦後」のそれに変えようとしている。令和が始まり、ポスト「戦後」といってよい時代を迎えた日本外交の成否は、いかに上手に、この米国の動きに対応し、国益を守るかにかかっている。

あらためていうまでもなく、トランプ大統領の政策で世界に最も重大な影響を与えているのは、その貿易政策である。大統領は、グローバリズムを基調とする世界貿易のこれまでのルールや協定は米国にとって公正なものではなかったとして、関税引き上げやその脅しをてこに、世界各国と個別の「ディール」(取引)を行い、米国に有利な新しい貿易関係を築こうとしている。

今度の日米貿易協定は、日本がそういう米国に対応する基礎となる、よい「ディール」になったと思う。自動車関税の問題など、個々の具体的な問題で損得の議論はできる。だが米中経済「戦争」に見られるように、世界貿易の行方が不透明さを増すなか、ともかく米国との「ディール」ができたことが、日本経済の利益になるのは間違いない。GDP世界第1位と第3位の国家間の「ディール」なので当然、世界経済の安定にも資することになるだろう。

しかも日本は、米国産農産物の関税引き下げを、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)の水準内にとどめることができた。TPPがトランプ政権の貿易政策と共存できることを世界に示したといえる。そのことは、米国とも協力して、自由で公正な世界の貿易秩序を模索する日本の影響力向上につながるはずである。

この「ディール」ができたことで日本は、トランプ大統領が日本など同盟諸国に求めている同盟負担の増大に関する問題を、貿易問題と切り離して考えることができるようになった。それもこの「ディール」の小さくない意義だろう。

報道によれば、トランプ大統領は先日、安倍晋三首相に在日米軍駐留経費負担、いわゆる「思いやり予算」の増額を求めたという。この問題についてもよい「ディール」ができることを期待したいが、その際に大切なことは、日米双方が、両国は単に経済や貿易だけでなく、安全保障の面でもグローバル・パートナーであることを忘れずに交渉することだろう。

日米同盟の負担分担の問題は、「極東」だけでなく、世界全体における両国の安全保障協力において、何が日米双方にとって公正な役割と負担の分担なのか、そのことを総合的に考えるなかで処理すべき問題である。北朝鮮情勢やイラン情勢もにらみつつ、じっくりと議論する必要がある。(さかもと かずや)