【朝晴れエッセー】11月月間賞は大阪・佐竹加織さんの『健康のバロメーター』(4/7ページ) - 産経ニュース

メインコンテンツ

朝晴れエッセー

11月月間賞は大阪・佐竹加織さんの『健康のバロメーター』

 玉岡 ラストで相手に呼びかけないでと言い続けている私ですが、これは認めます。柿の木との思い出がもっと書かれていれば、より良かったです。

 山田 「娘の彼氏が我が家にやって来た」は、今時はこうなのかと思わされました。「ビールは本物を用意し」というのがいい。普段は発泡酒なのでしょう。

 玉岡 結局、彼氏は特別な話をせずに帰った。「疲れた1日だった」に筆者の気持ちが集約されていますね。自身の32年前の体験と重ねたのもいい。ただ、居酒屋まで義父と歩いた45分もの間、どうされたのか気になって…。

 山田 どんな状況だったのか、少しでも書かれていればよかったですね。

 玉岡 それにしても今時のお父さんは、ちょっと弱腰なものなんですね。さだまさしの歌の時代とは変わりましたね。

 山田 何が目的で彼氏が来たのか、娘にも聞けていないですからね。

 玉岡 部長は母親の介護を振り返った「花束を君に」も選ばれています。

 山田 きれいなお話だなと。「人は死が近づくと死ぬ準備を始める。その準備を始めたのかもしれない」という、看護師の言葉が良かった。

 玉岡 介護を描いた作品は多いですが、本当にテーマが尽きません。今は介護に関係なく暮らしている人も、考えさせられるのではないでしょうか。

 山田 今、介護をされている方にとっては、自分と同じつらさを文章にされることで、助けられるところがあるかもしれません。

 玉岡 私が選んだ「断捨離断念」も、死期に関わるテーマです。大学受験のときのテキストが自分では捨てられず、処分を家族にお願いする。断捨離を断念するというのも、一つの結論なのかなと。

 山田 これはタイトルがうまいですね。

 玉岡 当時の大学は狭き門で進学率も低かったですから、大学受験は今よりもずっと、人生の中の大きな出来事だったと思います。私も共感しました。

 山田 玉岡さんの選んだ「蜘蛛(くも)」にも共感しました。前任地ではよくクモが出たので。

 玉岡 これぞ朝晴れエッセーの原点である暮らしの中のエッセー。ありふれた物事でも、多くの人と異なる見方をすればエッセーとして成立します。

 山田 ではそろそろ月間賞を決めましょう。今回は「健康のバロメーター」でしょうか。

 玉岡 そうしましょう。タイトル以外は、文句の付けどころがありません。