東京五輪代表選考を兼ねたレスリングの全日本選手権は20日、五輪実施階級の男子グレコローマンスタイル97キロ級で、世界選手権代表の奈良勇太(警視庁)が優勝し、来年3月の東京五輪アジア予選(中国)の出場権を獲得した。奈良は旧階級から4連覇。
まるで敗者のように首をかしげた。決勝で、奈良は母校・日体大の後輩、仲里優力(ゆうり)に競り勝ったが「全くだめ。試合に勝って勝負に負けた」と笑顔はなかった。
全日本選手権は3連覇中で「勝てるだろう」という慢心があったという。「追われる立場と追う立場の違い」と果敢に向かってくる相手に得意の首投げを封じられ、組み手争いで後手に回り、2点を先取された。後半、場外に出して2-2とし、同点に追いついた方が勝つルールでの薄氷の4連覇だった。
「レスリングを仕事にしている身として、なってない」と怒りを向けた矛先は、技術うんぬんではなく、大学生相手に油断をした己の未熟さ。右太ももの肉離れで11月は一切練習できなかったが、すでに痛みはなく、言い訳にはできなかった。
下馬評通り国内の代表争いでは抜け出したが、「全てにおいて足りない。心機一転、一からレスリングを組み立て直す」。東京五輪アジア予選に向け、険しい表情に危機感がにじんだ。(岡野祐己)