福岡発がん検診新技術 線虫で高精度判定、来月から実用化 県も支援し受診率向上に期待 - 産経ニュース

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福岡発がん検診新技術 線虫で高精度判定、来月から実用化 県も支援し受診率向上に期待

線虫を使ったがんの早期発見技術について福岡県の小川洋知事(右)に説明する広津崇亮代表取締役=17日、同県庁
線虫を使ったがんの早期発見技術について福岡県の小川洋知事(右)に説明する広津崇亮代表取締役=17日、同県庁

 優れた嗅覚を持つ線虫という生物に人の尿の臭いをかがせて、がんを発見する技術を実用化した福岡発のベンチャー企業「HIROTSUバイオサイエンス」(東京)が来年1月から検査を始める。1滴の尿から線虫が臭いでがんのリスクを判定し、早期治療につなげる。簡単で9800円程度と安価なことに加え、判定の精度も高いことから普及すればがん検診の受診率向上が期待される。福岡県庁で小川洋知事に実用化を報告した同社の広津崇亮代表取締役は「福岡発の技術を世界に広げていく」と語った。(九州総局 小沢慶太)

 同社は、九州大大学院助教だった広津氏が平成28年に設立し、県や同県久留米市の支援を受けて研究開発を進めてきた。線虫を用いた同社のがんの早期発見技術は「N-NOSE」と呼ばれる。生物学の研究に使われる体長約1ミリの線虫は嗅覚が犬よりも優れている。がん患者の尿に集まり、健康な人の尿からは離れていく習性を利用して、受検者の尿からがんのリスクを判定する。採取した尿は東京にある検査施設に持ち込み、2週間から1カ月程度で結果が報告される。

 これまでの研究で胃や大腸などの5大がんのほか、膵臓(すいぞう)や肝臓など計15種類のがんに反応することが実証されている。尿1滴で検査が可能なことに加え、費用も9800円程度と比較的安価に抑える。

 しかも、早期発見にも効果的だという。広津氏によると、ステージ「0」から「1」の初期段階の場合、一般的な検査では発見率は13%程度だが、N-NOSEでは約87%と高精度の判定が可能となる。早期発見は早期治療につながり、がんの克服にも役立つ。

 N-NOSEは来年1月以降、企業や健康保険組合が導入するほか、東京や大阪など大都市圏の医療機関で検査が受けられるようになる。福岡県では鳥飼病院(福岡市城南区)などで受診できるようにする。同県久留米、小郡両市では職員を対象にした検診で試験的な導入を進める。令和2年は国内で約25万人の検査を計画している。

 広津氏は「簡便で安く精度の高い検査はこれまで世の中に存在していなかった。40万、50万人と広げていきたい」と強調した。今後は国内での普及のほか、米国内でも2021年の実用化を目指している。

 がん検診をめぐっては、福岡県は受診率向上に頭を悩ましている。厚生労働省の国民生活基礎調査によると、平成28年の同県の受診率は5大がんでいずれも全国平均を下回っているのが現状だ。小川氏はN-NOSEの実用化が「受診率の向上や早期発見、早期治療に大きな光明をもたらす」と期待を込めた。

 一方、N-NOSEも課題がある。現在はがんかどうかを検査するだけで、がんの種類やステージまでは判定できない。また、検査機器の不足などまだ十分な態勢が整っておらず、導入を希望する企業や医療機関があってもすべてに対応できないのが現状だ。

 同社は、がんの種類も特定できるように研究開発を進めており、膵臓がんについては令和4年にも特定を可能にしたい考えだ。広津氏は「(検査態勢を強化して)おそらく5年後くらいには受けたいと思う人が全員検査できるようになると思う。そうなればもうがんは怖い病気ではなくなる」と力を込める。

 受診可能な医療機関などは順次、同社ホームページに掲載していく。