一方、マカオ大社会科学学院の楊鳴宇(よう・めいう)准教授(32)は、アイデンティティーの問題を指摘する。
「香港では自らを香港人と考える人が増えている。香港映画、香港音楽といった香港人意識を醸成するような文化もあるが、マカオにはない。自らを中国人と考える人が多い」
マカオには、マカオ人として結集する土壌がまだないというわけだ。
国家分裂や反乱の扇動、政権転覆を禁じた「国家安全法」(2009年制定、香港は未整備)がマカオ市民への無言の圧力となり、「自己規制が進んでいる」(蘇氏)との見方もある。
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これらの違いは政治状況にも反映されている。
立法会における民主派議員は、香港で定数70のうち23人を占めているが、マカオでは定数33のうち4人にとどまっている。
ただ、マカオでデモが起きないわけではない。14年5月には、政府高官に巨額の退職金と年金を支給する法案への抗議デモが行われ、主催者発表で2万人が参加。法案を撤回させた。
「マカオ市民は香港のように自由や民主ではなく、政府の悪政に立ち上がる。黙っているわけではない」と蘇氏は話す。
こうした市民の声を政治に反映させようと、マカオの民主派は香港の民主派同様、行政長官選に普通選挙を導入するよう求める運動を続けている。