年の瀬 記者ノート

足利学校 「ネタの宝庫」改めて実感

 「学校様」と足利市民に呼ばれ親しまれている足利学校には今年1年、随分、取材で足を運んだ気がした。スクラップブックで確認すると関連記事が36本にも上り、「そんなに書いたとは」と正直、驚いた。37本目のこの記事で打ち止めになるのだろうか。足利学校は「ネタの宝庫」と改めて実感した1年だった。

 1月10日付の「寒紅梅ほころぶ」を皮切りに足利ゆかりの刀工・堀川国広の刀剣展、国内最古の大成殿改修と続き、4月1日の新元号発表を迎えた。

 「元号は令和。出典は万葉集」。政府発表に、職員、詰めかけた報道陣は耳を疑った。元号の出典元はこれまで主に漢籍で、今回も同学校所蔵の国宝「文選(もんぜん)」などを想定していたからだ。記事をどう仕立て直そうかと苦慮していると、職員が「万葉集もありました」と駆け込んできた。

 所蔵していたのは江戸期の万葉集20冊で状態も良く、出典箇所も掲載されていた。漢籍(約8千冊)で有名だが、国書も約9千冊有する。しかも最後の足利藩主・戸田忠行、文人画家・田崎草雲ら地元有志の寄贈と分かり、後日、記事にまとめた。

 元号以外にも今年の話題に事欠かなかった。NHK大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」に登場する柔道の父・嘉納治五郎が訪れていたことでも話題になった。また、新一万円札の肖像画になった渋沢栄一が明治時代、揮毫(きごう)、扁額(へんがく)を残していた。

 さらに調べると尾張初代藩主・徳川義直、幕末の志士・吉田松陰、高杉晋作、文人画家・谷文晁(ぶんちょう)、渡辺崋山、大隈重信、東郷平八郎、乃木希典らも訪れ、これも記事化した。

 9月13日付紙面には「戦国時代、九華(きゅうか)の木板発見」の見出しが躍った。九華は同学校全盛期の庠主(しょうしゅ)(校長)で、木板には自署で稲荷(いなり)社の再建経緯が記されていた。大成殿内から偶然、見つかった。

 11月下旬、来日したローマ教皇(法王)フランシスコの話題も飛び込んだ。上智大学の講話で「ザビエルが感銘を受けた足利学校は日本文化の力を示す」と紹介したという。日本にキリスト教を伝えたザビエルは「日本で最も有名で最も大きな大学」と書簡に記していた。

 「戦国時代、学徒が渡航した記録もあり、詳細に調べないと。それに来年は学校復元30年ですから」と同学校事務所の大沢伸啓(のぶひろ)所長(60)。「学校様」通いはまだまだ続く。(川岸等)

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 今年も残すところあとわずか。県内の出来事を追いかけた記者が振り返る。

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【用語解説】足利学校

 「日本最古の学校」とされるが、創建時期は諸説あり不明。戦国時代、軍師養成機関として栄え、学徒3500人以上を抱えた。敷地約1.8ヘクタールが国指定史跡で、江戸初期建造の学校門、大成殿などが残る。国宝指定の漢籍4種77冊所蔵。平成2年、方丈(ほうじょう)や庭園などを整備し、江戸中期の姿に復元された。

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