ただ、首相周辺はここに解散のチャンスがあったと指摘する。
日米貿易協定の承認を確実にした上で国会の会期を延長し、衆参の憲法審査会で改正案を採決する時間を確保する。野党が拒んでも採決をしようとすれば、反発する野党から内閣不信任決議案が提出され、それを大義に衆院解散に持ち込む-というシナリオだ。
憲法改正を解散の大義にすることには否定的な意見もあるが、首相周辺は「改正案は(駅や商業施設での共通投票所の設置など)公職選挙法に内容を合わせるだけのもの。反対する方がおかしい」と語り、いざ解散となれば国民の理解を得られると考えた。
同時に、主要野党は足の引っ張り合いを続けて選挙協力の見通しは立っておらず、この隙に衆院選を断行すれば、与党が地滑り的に勝利するとの計算も立つ。さらに、先の国会では閣僚の「辞任ドミノ」や首相主催の「桜を見る会」をめぐる野党の追及などを受け、報道各社の内閣支持率が軒並み5ポイント前後も下落した。
衆院選で出直しを表明して信任を得られれば、政権の求心力も回復する-。永田町には一時、「12月15日に衆院選投開票」といった具体的な日程までまことしやかに流れた。しかし会期延長はなく、改正案の採決も行われないまま、臨時国会は幕を閉じた。