来夏の東京五輪・パラリンピック中に首都圏での交通渋滞が予想されるなか、都会での自転車通勤需要の取り込みを狙ってブリヂストンサイクルは11日、新型電動アシスト自転車「TB1e」を発表した。スポーツタイプの走行性やデザイン性にママチャリのような実用性も融合。メーカー各社はこうした「電動クロスバイク」市場が、大会中の交通問題を機に拡大する可能性を見込む。
来年2月上旬発売のTB1eは見た目はスポーツタイプだ。ハンドルはまっすぐなフラット型でサドルは細身。チェーンやギアが一部むき出しで、フレームは直線的なデザインだ。最大の特徴は下り坂やブレーキ時に走りながら充電する機能で、走行距離が4割アップ。一般的な使い方なら従来3週間に1度必要だった充電が1カ月に1度で済み、走り方次第で頻度がさらに減って長距離通勤も楽に不安なくできるという。
一方で、ママチャリとも呼ばれる「軽快車」と同じタイヤを使用し、ペダル周囲のチェーンはカバー付き。通常のクロスバイクにはない泥よけやライト、サークル錠も標準装備として、日常使いでの利便性を高めた。12万9800円(消費税別)。
平成5年に世界で初めて電動アシスト車を投入したヤマハ発動機も、「PAS Brace(ブレイス)」(税別16万1千円)などスポーティーさと利便性を両立させたクロスバイクタイプをそろえてきている。
背景には「ユーザー層の変化がある」と、ブリヂストンサイクルの瀬戸慶太マーケティング本部長は話す。ここ10年ほどで高齢者や子育て世代に限らず、通勤・通学利用が増えたという。自転車産業振興協会による自転車利用者全体の調査では、通勤用途の人は平成24年の20・5%から30年には22・9%に増加。国も昨年決定した「自転車活用推進計画」で自転車通勤を促進するなか、渋滞と無縁で中長距離を楽に走れてスーツでも乗れる、デザイン性が高い電動クロスバイクの需要が高まっているというわけだ。
五輪などの大会期間中は、一般道も含め交通規制が行われ、鉄道も時差通勤が推奨される。瀬戸氏は「この機に自転車通勤をしてみようという人が増える可能性があり、販売を伸ばしたい」と特需を期待する。ヤマハ発も「来年はさらに通勤需要が伸びる可能性がある」とみている。大会スポンサーでもあるパナソニックはクロスバイク型の「ジェッター」の五輪デザイン車を来年1月に発売し、需要喚起を狙う。(今村義丈)