話の肖像画

星野リゾート代表・星野佳路(59)(1)日本文化を背負って

(岡田美月撮影)
(岡田美月撮影)

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〈平成28年7月、日本屈指のビジネス街である東京・大手町に日本旅館「星のや東京」をオープンした。旅館の代名詞ともいえる温泉も地下1500メートルからくみ上げるなど「和のおもてなし」が徹底されている。高層ビルが林立するオフィス街に登場した、地上17階地下2階建てのタワー型旅館は衝撃だった。29年にはトランプ米大統領の長女、イバンカ大統領補佐官と安倍晋三首相との夕食会場にもなった〉

「星のや東京」は都市で通用する日本旅館ですが、これはわれわれのテーマで、若い頃の体験に基づくものです。

米コーネル大学ホテル経営大学院修了後、日系ホテル会社に入社して、米シカゴで働いていました。学ぶことが多かったのは、ホテルの開発プロジェクトのマネジャーを担当したころです。あるホテルがオープンするときのこと。そのホテルは当時の競合他社と比較しても広さ、価格、設備、インテリアに至るまで、申し分ないのです。ただおもしろいことに、向こうの人たちから想定外の質問を受けました。開業を間近に控え、広報活動として地元のマスコミなどメディアを呼んで、見学してもらいました。そのとき、「なぜ日本のホテル会社が米国に来て、西洋ホテルを運営しているんだ」と聞かれ、びっくりしました。われわれがやろうとしていることが米欧の人たちから不思議に見えていると、初めて気付きました。

外国の人たちに「不思議なビジネス」と捉えられてはだめなのです。彼らから見てもストンと腑(ふ)に落ちる、ナチュラルな納得度というものがすごく大事です。

〈「星のや東京」は玄関から靴を脱いで入り、総畳敷きで露天温泉も備えるなど純和風な空間が広がる。開業時には「東京で日本旅館が通用することを示して、海外進出の足掛かりにしたい」と語っていた〉