環境負荷の少ない商品やサービスなど、社会における持続可能な調達の促進を図る取り組みに加えて、SDGs(持続可能な開発目標)の達成に寄与する取り組みを表彰する「第20回グリーン購入大賞」(グリーン購入ネットワーク主催)の受賞社が発表され、インクカートリッジのリユース品を販売するエコリカ(本社・大阪市)が大賞を受賞した。
宗廣宗三社長(61)は「当社が長年取り組んできた、無駄にしない、資源循環型のリサイクルの仕組みが評価されたことを大変嬉しく思います」と喜びを語った。
同社は、平成15年からインクカートリッジの回収箱を設置し、回収からインクの詰め替え、販売というリサイクルの仕組みを作り、回収数と販売数で業界首位を維持(※)。LED照明の製造販売にも進出し、環境貢献型商品の普及に力を入れている。
審査では、使用済みインクカートリッジの回収・循環システムを独自に確立し、プラスチック製品の再使用に積極的に取り組み実績を上げてきたこと、回収率の高さや全国規模で展開していることなどが高く評価された。
グリーン購入大賞は、環境負荷の少ない商品やサービスの購入に取り組む企業、行政、民間団体等で設立されたグリーン購入ネットワーク主催。昨年からは労働者の権利や貧困などの社会課題への理解を深めるため、SDGsの目標達成に寄与する取り組みについても表彰している。
「地球にやさしく、財布にもやさしく」
第20回グリーン購入大賞を受賞したエコリカ(本社・大阪市)は、リユース品のインクカートリッジでは業界のトップ企業。回収から詰め替え、販売まで。ユーザーと小売店、工場を結ぶリサイクルの仕組みを全国規模で普及させるまでの道のりは決して平たんではなかった。同社の宗廣社長に受賞の喜びや、事業への思いを聞いた。
回収ボックスは1万カ所以上 1号機は製作費35万円
「繰り返し使えるものを繰り返し使うことで地球にやさしく。そして、安全に安価で提供することで人や財布にもやさしくする。そんなところが、ユーザーにも受け入れやすかったのではないか」
大阪発の循環型商品として生まれ、全国規模に広がった同社のリユース品について、宗廣社長は振り返る。
大手量販店や家電品店の店頭で、今やすっかりおなじみになったエコリカの緑の回収ボックス。その数は家電量販店を中心に約6000店舗以上、個人事業所向けの小型回収ボックスなどを含めると約1万カ所以上に上る。回収の仕組みづくりの一歩として、家電量販店の店頭に回収箱を設置したのが平成15年。設置費、運搬費は自社で負担した。
「業者に依頼して最初に作った回収箱は1台35万円もした。何とかコストダウンしてもらったが、それでも当初は負担が大きかった。しかし、回収ボックスをどれだけたくさん配置してカートリッジを集めることができるか。それが事業を軌道に乗せるカギだった」
累計で3億個以上を回収 小売店も「熱意」に賛同
同社の調査によると同25年のインクカートリッジの年間流通量は約2億個。うち、大半は一般ごみなどとして処分されているのが実情だ。同社はこのうち、約2800万個のカートリッジを回収、うち約1700万個を製品化した。創業以来の回収数量は3億個以上に上るという。
しかし、逆風は強かった。プリンターの純正インクを販売する大手メーカーが、リユース品を扱うメーカーを相手に特許権を侵害しているとして次々に訴訟を起こした。エコリカも大手メーカーから訴訟を起こされた。宗廣社長は、すべての裁判日程に出廷、時には裁判のために週に2日上京することもあった。
「量販店の中には、大手メーカーに配慮して、回収ボックスを置くのをためらうところもあった。その一方で、『社長が命をかけてやったのだったら、応援しますよ』と賛同してくれるところもあった。多くの人との出会いや、応援があったから全国にまで広げることができた」
注目を集めた訴訟は、同19年に勝訴が確定、新聞やテレビでも大きく報じられた。同20年には、刷新された再生インクカートリッジのエコマーク第1号に選ばれ、その翌年には環境に配慮した取り組みが評価され第18回地球環境大賞「フジサンケイビジネスアイ賞」にも輝いた。同社は平成17年以降、14年連続で純正品以外のインクカートリッジで販売シェア1位を維持している(※)。
「最近では個人だけでなく、企業でも使ってくれるところが増えてきた。しかし、リユース品の市場は、大手メーカーの純正品に比べるとまだまだ小さい。安価で高品質なリユース品を提供することで、これからもユーザーの選択肢を広げていきたい」
プラスチック再利用も視野に 年賀状シーズンにはキャンペーンも
回収ボックスに集まったインクカートリッジは、分別拠点の岐阜県郡上市に回収センターなどに送られて再利用が可能なものかどうか選別される。使えると判断されたものは製造拠点であるフィリピンの工場に送られる。一方、リユースできなかったカートリッジについても、折りたたみ式のコンテナやプラスチック原料にしたりして、むだにならないようなさまざまな試みをしている。今回の受賞では、こうした取り組みも評価された。また、製品1個を販売すると、売上から1円を世界自然保護基金(WWF)に寄付する活動も続けている。
師走に入り、今年もまた、インクカートリッジが活躍する年賀状の季節がやってきた。同社は、書き損じたはがきの有効活用の一環として、普及のインクジェットプリンターで印刷したはがきを応募すると抽選で1等100万円の金券などが当たる「エコリカちゃんへ年賀状を送って100万円が当たるキャンペーン」を展開中だ。
「メールやSNS(交流サイト)の普及で、写真をプリントしない人が増えてきた。でも、年賀状で家族の写真を送ると、それが団らんの場に届いて『この子、こんな大きくなったよね』とか、心温まる話がはずむ、こういう習慣は他の国にはないと思う。日本の大切な文化を、これからも継承していく役に立つことができれば」
【社長経歴】宗廣宗三(むねひろ・しゅうぞう) 昭和59年、コンピューターと周辺機器の卸売会社「エム・エス・シー」を設立。リサイクルを行う共同事業目的会社として平成15年にエコリカを設立。京都工芸繊維大卒。岐阜県郡上市出身。61歳。
【会社メモ】エコリカ 平成15年創立。リユース・リサイクルインクカートリッジのほかリユース・リサイクルトナーカートリッジや、LED・有機EL照明の開発、製造などを行う。 本社:大阪府大阪市中央区鎗屋町1-2-9
提供:株式会社エコリカ
※互換インクカートリッジ(リサイクル品・汎用品)の全国販売シェアとしてBCN(2005年~現在)、GfK(2009年~現在)の実売データより自社集計