朝晴れエッセー

ハッピーオーラ・12月5日

夫は長く単身赴任生活をしている。

当初は誰一人として知る人もいないなか、マンションの一室と電話だけをあてがわれ、ハローページを片手に営業活動を開始したのだった。

ところがまともに話すら聞いてもらえず、慣れない自炊生活と相まって、夫は次第に精神的に追い詰められていった。

帰省する度に目の下の隈(くま)がひどくなり、朗らかだった夫から笑みが消えた。鬱(うつ)病との診断を受けるも、家族を養うため、彼は自分を奮い立たせて赴任先へ戻って行った。

あれから十数年。途中、夫は転職したが、その際、奈良には戻らず、かの地に残ることを選択した。

夫は強くなっていた。そしていつしか人脈もでき、なかには仕事上の付き合いから一歩進んで、自宅にまで招いてくださる取引先の方もできた。夫のお客さんである、Oさん宅のホームパーティーに呼んでいただいたと言うのだ。

「そんな私的な集まりに行かせてもらっていいん?」「それが、Oさんの娘さんが、俺も誘えばいいって言ってくれるねん。娘さんは俺のこと、あのハッピーオーラの出てる人って言うねんて」

ハッピーオーラ。何て素敵(すてき)な言葉だろう。

そうだった。かつて夫と知り合ったとき、確かにそんな空気感が彼を包んでいた。

苦しかった日々を乗り越え、夫は今、とても充実しているように見える。夫に感謝、夫を押し上げてくださったすべての人々に感謝だ。

そして、もっともっと夫のハッピーオーラが全開となるよう、私も頑張りたい。

寺前 利香 54 奈良県吉野郡