平成7年の阪神大震災の際、被災地の精神的な問題について産経新聞で連載し、若くして世を去った精神科医をモデルにしたNHKドラマが、来年1月18日から放映される。大震災から来年で25年。日本の「心のケア」の先駆けをなした精神科医の業績と生き方に、再び注目が集まる。
モデルは大震災当時、神戸大学医学部精神神経科助手だった故・安克昌(あん・かつまさ)医師。神戸市で自らも被災しながら、発生約2週間後から産経新聞で「被災地のカルテ」という連載を始めた。
被災直後に見られた高揚感とその後の疲労感、生き残った者の罪悪感など、大規模災害下のさまざまな精神状態を報告した。「心のケア」や「心的外傷後ストレス障害(PTSD)」が日本で認知される中心的な役割を担った。
約1年間続いた連載に加筆、改稿した著書『心の傷を癒すということ』で平成8年、サントリー学芸賞を受賞した。同書で報告された精神的な問題だけでなく、安医師や彼の仲間が被災地で模索した手法も、その後の災害の場で生かされている。医師らが現場に出かけていくこと(「アウトリーチ」)、被災者の話を共感して聞くこと(「傾聴」)などである。