アフガニスタン東部ナンガルハル州ジャララバードで4日午前、現地で農業支援などの活動をしていた日本人医師、中村哲さん(73)の乗る車が武装勢力に銃撃された。州政府報道官によると中村さんは銃弾を受けて地元病院に運ばれたが、その後死亡が確認された。
地元警察によると、車に同乗していたボディーガードと運転手のアフガン人5人も銃撃で死亡。犯人は現場から逃走し、警察当局が行方を追っている。犯行声明は出ていないがイスラム原理主義勢力タリバンは関与を否定する声明を発表。イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)の関与が疑われている。
中村さんは同日朝に宿舎を出発して、25キロほど離れた用水施設の工事現場に向かうため、ジャララバード市内を車で移動中だった。車のフロントガラスには、少なくとも3発の銃弾の痕が残っているのが確認されている。
中村さんは右胸に銃弾を受けたが、地元病院に搬送された当初は意識があった。その後、首都カブールで治療を受けるため、カブール北方のバグラム米空軍基地に搬送される途中に死亡したという。
アフガンのガニ大統領は4日、声明を発表し、事件をテロと断定。哀悼の意を示した上で、「人々は彼の仕事をいつまでも覚えているだろう。このような残虐行為は、アフガンの進歩と繁栄のために働くという国民と国際的パートナーの決意を阻止することはできない」と強調した。
中村さんは非政府組織「ペシャワール会」(福岡市)の現地代表で、貧困層への医療支援や灌漑(かんがい)事業の指導などを行い、2018年にアフガン政府から勲章を授与された。
アフガンでは08年、同じくペシャワール会の日本人、伊藤和也さんがジャララバード近郊で武装グループに拉致され、後に遺体で発見された。
(シンガポール 森浩)