朝晴れエッセー

富士山・12月1日

富士山は私にとって、ゆったり眺めるものでも登るものでもなく、新幹線の窓から数分間だけ見るものである。

窓の外に富士山の雄大な姿が現れると感激し、特に晴れた日のくっきり見えた姿は本当に美しいと思う。

娘が東京に住み始めてから、神戸と東京を行き来するようになり、窓から富士山を見る機会が増えた。

ところが、あるとき、近所の仲良しの友人と話していたら、彼女は一度も富士山を見たことがないというのだ。東京に行くこともさほどないし。行ったときも夜だったり雨だったりで見えなかったそうだ。

富士山が窓から見えるのは、結構価値のあることに思えてきたので、一度、新幹線の窓から撮った富士山を、LINEでその友人に送ったら、とても喜んでくれた。その後も、東京に行くときは富士山の写真を撮って送るのだが、毎回、

「わー、今日もお山がきれい!」などと言って喜んでくれる。

そうなると、以前のようにのんびり構えていられなくなった。

新幹線に乗ったときから、富士山の見える時刻をスマホで調べ、分刻みで待ち構えるようになった。きれいに撮れるポイントも分かってきた。

本を読んでいても中断し、眠くても頑張ってスマホを構えているのに、曇っていて見えないとがっかりする。

幕末の士、山岡鉄舟は、

「晴れてよし曇りてもよし富士の山」

と詠んだが、凡人の私は、

「晴れてよし見えてこそよし富士の山」なのである。

澤田真理子(60) 神戸市須磨区