朝晴れエッセー

本が捨てられない・11月28日

娘の家族が同居することとなった。2歳の男の子の孫がおり、おなかの中には2番目の孫もいる。私たちの世代で空き家になることも覚悟していたが、次の次の世代まで希望ができた。

しかし、部屋が足りない。90歳を超えた母には狭い応接間に移ってもらい、母が使っていた部屋を娘たちが使うこととした。

娘から、物置に使っている部屋を整理して空けてほしい、という提案があった。この部屋には、亡くなった父と私たち夫婦の本がぎっしり詰まっている。

父は終戦時、国立大学の助手をしていて、京都の寒い冬に並んで買った本だと話していた。私も薦められて読み、知識欲を満たした。父を理解する一助ともなった。図書館にない本もあるだろう。

私もそれなりに愛書家で、貧乏学生時代に、昼食を抜いて買った本、神田の古本屋街を3日歩いてやっと見つけた本、卒論のために集めた本など、一冊一冊に青春の思い入れがある。

引っ越しのたびに、ずいぶん処分してきたが、それでも捨てられなかった本ばかりだ。もう読むこともないとは思うのだけれど、眺めているばかりで整理の手も付けない私を見て、娘たちがあきれている。

孫たちが成長すれば、個室を要求するだろう。人生の終盤の今、自らの手で処分するのも良い機会かもしれない、と思い始めている。

海老澤 康裕 68 茨城県茨城町