--日本は脱退後もIWCに協力するのですか。
「そうです。鯨類研究には、クジラを捕らなければ分からないこともある一方で、捕らなくてもできることがあります。たとえば、ホエール・ウォッチングや水族館での鯨類の飼育、そして海上交通ではクジラとの衝突防止、座礁や混獲など、さまざまな問題があり、そうした問題をカバーできるよう、広くとらえた鯨類研究が発展することを期待しています」
--日本の鯨類研究はIWC脱退後も、孤立しないということですか。
「現に、今年もIWC科学委員会には多くの日本人研究者が参加していますし、北太平洋の共同調査にも参画します。南極海の目視調査にも、日本は調査船派遣を予定しています。調査にいちばんいいのが、日本の捕鯨船です。決して日本がIWCから離れるということはないんですね。少なくともIWCの科学委員会は日本を評価し、日本の参画に期待をしているのではないですか。日本は期待されているし、これからも協力して調査を積極的にやっていくことになります」
捕鯨批判には「民族問題」も
--日本は度々、批判にさらされます。しかし、世界では、ノルウェーやデンマークなど、捕鯨国はあります。なぜ、日本はここまで批判されるのですか。
「欧米では、黄色人種の日本が経済発展を遂げていることへの『やっかみ』のようなものがあるのかもしれません。欧米で民族によって差別されているのを見ると、そんなものがあるのかな、と思うことがあります。私は陸軍幼年学校に通っていたせいか、欧米に対する敵愾(てきがい)心もあるのかもしれません。民族の問題が根っこにあるのかもしれません」
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大隅清治 享年89。昭和5年、群馬県生まれ。陸軍幼年学校49期。ニタリクジラ研究から鯨類研究の世界に。東京大学大学院博士課程修了後、昭和40年代から国際捕鯨委員会(IWC)会合に連続して出席、鯨類学研究の発展に尽力した。平成7年から16年まで日本鯨類研究所理事長。平成14年に勲四等瑞宝章、18年にはノルウェー王国功労勲章を受章した。著書に、『クジラは昔 陸を歩いていた:史上最大の動物の神秘』(PHP文庫)、『クジラと日本人』(岩波新書)、『クジラを追って半世紀-新捕鯨時代への提言-』(成山堂書店)など。
※インタビューの英語バージョンは後日、「日本の素顔」を世界に発信する英語ニュース・オピニオンサイト「JAPAN Forward」にもアップする予定です。