朝晴れエッセー

紙縒り・11月19日

吉永小百合さん主演の映画「最高の人生の見つけ方」を見た。吉永小百合さんふんする「幸枝」が、前川清さんふんする「青年」と祭りの夜、出会うシーンでげたの鼻緒が切れた「幸枝」に、自分のげたを履かせ、背負う心優しい一場面で母のことが思い出された。

何時(いつ)の頃か母が、父を意識することになった出来事を聞かせてくれたことがあった。

町では月に一回「青年団の常会」が決まっていたそうで、常会の夜のこと、会が終わり、母がげたを履こうとしたとき、鼻緒に「紙縒(こよ)り」が結んであった。

皆の前では解いてみる気持ちになれずに家に帰って、そっと開いてみると「好きです」の四文字。父と結婚を決意する「運命の紙縒り」だった。それを話す母は、娘時代に戻ったかのようにうれしそうに恥ずかしそうに、一言一言、かみしめる言葉で話してくれた。

数十年前の母との思い出が、蘇(よみがえ)ってきました。

その時、父の胸中は、どんな風であったのだろうか? 男として好きになった女性のために「紙縒り」に、込めた「好きです」の四文字。父の母にささげる、精いっぱいの愛情であったのだろう。

映画「最高の人生の見つけ方」で、父と母の人生を思う時間でした。

金澤 勝義 76 大阪府高槻市