世界最高額500万円のカニはどこへ行った

 小林さんは「料理人冥利に尽きる。人生で一度しかない経験ができた」と振り返る。

寿命も「記録級」

 「世界一からは陥落したが、現役では一番高価な五輝星になる」。こう話すのは鳥取市の水族館「とっとり賀露(かろ)かにっこ館」の担当者。同館では、昨年の初セリで200万円で落札され「競りで落札された最も高額なカニ」としてギネス世界記録に認定されたカニがいる。500万円のカニと同じ「かねまさ・浜下商店」が落札し、その後、県に寄贈され、同館で生きたまま展示されている。

 試験操業で捕獲されたズワイガニが1つの水槽に約30匹入っているのに対し、200万円のカニは1匹で水槽を占有するVIP扱い。人が近づいてもほとんど身動きしない堂々とした態度は職員から「チャンピオン」と呼ばれている。

 タフさも王者だ。同館によると、捕獲されたカニが人工飼育で一年以上生存するのは極めて珍しい。開館当初からカニの飼育を担当する丸山将士さん(44)も「捕獲されたカニはダメージが大きく人工飼育は難しい」と打ち明ける。

 「200万円のカニ」も同館に来た直後はしばらく食欲がなかったが、施設改修で2週間休館したのを境に変化がみられた。「休館中は館内が真っ暗な状態。それからエサを食べるようになり、安定して飼えるようになった」と丸山さん。現在も水温を3度に設定するなど深海に近い環境で大事に育てられている。

慣れない環境でストレス

 これより以前の「最高額のカニ」はどうなったのか。

 70万円と130万円のカニは鳥取市の別の業者が落札して県に寄贈。ただ、70万円のカニは約2カ月、130万円のカニも半年ほどで死んだ。慣れない環境でストレスがたまったのが原因とみられている。現在はかにっこ館で剥製が展示されている。

 鳥取県はカニのシーズンに合せて「蟹取県」に改名し、観光キャンペーンを展開中。平井伸治知事は「鳥取県のカニがブランドとして、一流どころが高い値段をつけても買いたいというように変わってきた。(500万円の落札は)その弾みとなる瞬間だった」と話している。

会員限定記事会員サービス詳細