「新宿鮫」8年ぶり新刊 大沢在昌さん、現代社会の闇に焦点

「新宿鮫」シリーズ最新刊「新宿鮫XI 暗約領域」を手に持つ作家の大沢在昌さん=19日、東京・新宿
「新宿鮫」シリーズ最新刊「新宿鮫XI 暗約領域」を手に持つ作家の大沢在昌さん=19日、東京・新宿

 人気警察小説「新宿鮫」シリーズの最新刊「新宿鮫XI 暗約領域」(光文社)が20日に刊行されるのを記念し、作者の大沢在昌さん(63)が19日、同シリーズの主な舞台でもある東京・新宿で報道陣の取材に応じた。同シリーズの刊行は8年ぶり。大沢さんは「第2部というか、新しい新宿鮫の入口になる作品になった」と手応えを語った。

 裏社会の人間から恐れられながら、警察組織の中では黙殺されている一匹狼の新宿署刑事・鮫島の活躍を描いた同シリーズは平成2年に開始。長編では今作で11作目となる。大沢さんは「ある意味、愛憎相半ばする作品。もちろん、『新宿鮫』のおかげで人生はいい方に転がりましたが、自分の人生を『新宿鮫』に振り回されている気もする」と振り返る。

 前作「絆回廊」では、シリーズを通じておなじみの重要人物2人がいなくなるなど、衝撃的な展開となった。「多くの人が『新宿鮫シリーズはこれで終わった』と思ったみたいですが、全くそんなつもりはなかったです」。刊行まで8年かけた理由については、「僕の中での熟成というか、覚悟が決まるのを待っていた」と語る。

 シリーズを通じて濃密な人間ドラマと、現代社会が抱える闇に焦点を当てている。今作でも「民泊」をめぐる問題など、時事的な話題をストーリーに織り込んだ。「今作を読めば分かりますが、(鮫島にとって)事件が解決していない部分もある。それをこれからのシリーズで片づけていかないといけない」

 次回作の具体的構想について問われると、「さすがにまったく考えていない」と苦笑い。「ただ、小説家というのは悲しい生き物で、『新作待ってます』という声が何よりうれしい。僕にとって、その声が一番大きいのが『新宿鮫』。60代のうちに(次回作を)出したいと思います」と意欲を見せた。

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