ぐんまアート散歩

県立館林美術館「ピカソ展-ゲルニカ[タピスリ]をめぐって」

 本展はピカソ以外の作品・資料の展示も積極的に行うことで、スペイン内戦がどのようなものであったのか丁寧に紹介し、結果として《ゲルニカ》の特性である解釈の多様さを、鑑賞者におのずと案内するものにもなっている。

 さて肝心の《ゲルニカ(タピスリ)》は、3点が制作されたうちの第3バージョンである。第1バージョンが1955年に制作され、ピカソがその下絵に修正の指示を行い制作されたのが第2バージョン(1976年)、そして本作(1983年)だ。制作したのは、すべて織師のジャクリーヌ・ド・ラ・ボーム=デュルバック。作品をそのまま写すということではなく、織物で明暗や陰影を表現するために原画と異なる色糸を用いるなど工夫しているという。

 そういった差異を見つめることは、作品を注意深く鑑賞することにつながるだろう。現在も世界各地で繰り広げられている戦争のことを考えるならば、いまなお《ゲルニカ》は社会に対して切実な意味を持ち続けているのである。国外持ち出しが禁じられている《ゲルニカ》をタピスリによって鑑賞する、またとない本展に、ぜひ出かけてほしい。(太田市美術館・図書館学芸員、小金沢智)

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