新谷さんによると、これまで日本の美術館で写真撮影が許可されなかった大きな理由は、「著作権」「会場運営」「作品保全」の3点とされているという。
著作者の死後70年は著作権者の許可なく不特定多数に画像公開ができない。会場運営の面からみると、鑑賞者のなかにシャッター音などを嫌う人もいてトラブルになることが危惧される。そして、絵画は年間に当ててよい光の量が定められていて、フラッシュをたくと作品に負担をかけることになる。こういった点をクリアする必要があるからだ。
「ラファエル前派の軌跡展」は出品作品が19世紀のものが中心で、著作権の条件は満たしている。さらに、「室内に写真撮影が可能なエリアがあります」という立て看板を入り口に掲げるなど告知をしたり、鑑賞者が撮影する際、近寄りすぎて作品をいためないように高さ30センチほどの結界をひもでつくったり、と対応をとって一部作品を撮影可能にした。
それでも、来場者は「鑑賞されている方にお邪魔じゃないか」「シャッター音が失礼にならないか」と心配そうな様子。どことなく気まずく「自主規制」しがちになるという。
イメージの手助け
ツイッターの投稿では、この写真は撮影可能だった、ということわりを書き込んでいるものがほとんど。撮影する側も展示する側も、「トラブル」を恐れておっかなびっくりという状態が続く。
新谷さんによると、来場者アンケートをとると、なかには、撮影が鑑賞のさまたげになるという声もあるという。ただ、新谷さんは撮影を歓迎している。「『ラファエル前派』と聞いても作品がイメージできない人たちにはSNSがその手助けになる。せっかくのこうした撮影機会を、ぜひ活用してほしい」と話している。
◇
「ラファエル前派の軌跡展」は12月15日まで。