「写真撮影OK」の美術展が、日本国内でも増えている。だが会場をのぞくと、慣れないせいか、「注意されるかも」とおっかなびっくり撮影する人が目立つ。パリのルーブル美術館やロンドンの大英博物館、ニューヨークのメトロポリタン美術館など、海外では入館者による展示作品の撮影が普通に行われているのに、日本ではなぜ「撮影の自由」が浸透しないのだろう。(正木利和)
初めての写真撮影
大阪市阿倍野区のあべのハルカス美術館で開催中の「ラファエル前派の軌跡展」。赤いじゅうたんを敷いたエリアに掛かっている25点が撮影可能だ。ミレイの「結婚通知-捨てられて」やロセッティの「ムネーモシューネー」、ハントの「シャロットの乙女」など、同派を代表する画家の作品が並ぶ。
「10年ほど前、ルーブルに行ったときは撮影できたけれど、日本で撮影するのは今回が初めて」と赤じゅうたんエリアでスマートフォン(スマホ)をつかって撮影していた大阪府枚方市の自営業、井坂誠さん(57)。「『こんなん見てきたよ』と友達にメールも送れる。もっとこうした機会を増やしてほしい」
大阪市の会社員、石黒陽子さん(60)も「初めて知ってびっくり。友人にさっそく『すてきだよ』ってラインします」。
スマホで撮影中の人に取材で声をかけると、「怒られるのかと思いました」と驚かれることも。ツイッターなどにあがった写真もたくさんある半面、恐る恐る撮影している人も多い。
だが日本でも、国立西洋美術館(東京都台東区)、和歌山県立近代美術館(和歌山市)など、常設展示作品を中心に撮影可能な美術館も増えている。
お邪魔になる?
パリのルーブル美術館をはじめ海外には撮影可能な美術館が多い。そのため、「外国からのお客さんに『なぜ撮影できない』とクレームを受けることも多い」とあべのハルカス美術館の新谷式子学芸員。