朝晴れエッセー

シャインマスカット・11月18日

45歳を過ぎて初めて知ったことがある。

少々お値段は張るが、皮ごとパクッと食べられるあのシャインマスカットのおいしさだ。ぶどうは秋の代表的な果物だが、皮を剥いたり種を出すのが手間なこともあって食べることは少なかった。しかし友人宅で出されて初めて口にした瞬間の感動たるや! フレッシュで爽やかで果肉と皮のバランスが絶妙で、いつまでたっても幸せな気分に包まれる。

ある昼下がり、テレビでシャインマスカットのスイーツの紹介映像が流れていた。先日食べたばかりなのに、また食べたくなってきたわ、と思ったその時、ピンポーンとお客さま。宅急便と思いきや、1つ下の階にお住まいのご婦人がシャインマスカットを持って立っている。

「あの…お宅のお嬢さんに学校帰りに会うことがあるのだけど、私の足腰が悪いのをみて、荷物を玄関まで持っていってくれるんですよ。そのお礼に」

え? そんな話、小6の娘からは一切聞いたことがない。

「そんなことあったの?」と聞くと「あ、うん」とそっけない返事。「小さいころから知っていることもあるけど…かわいくて。ありがたいですね」とご婦人は笑みを浮かべて話される。

振り返ると娘は気にも留めずテレビをみている。娘は…親の知らないところでそんなことをしてくれていたんだ。

誰にも言わない娘の優しさと成長に、シャインマスカットを食べたときのような、いや、それ以上に爽やかで清々(すがすが)しい感動が私の心に広がっていった。

紙谷 美樹子 49 東京都大田区