長崎・石木ダム用地明け渡し、きょう期限

長崎県と佐世保市が川棚町に計画する石木ダムの建設に反対し、水没道路の付け替え工事現場付近で座り込む住民ら
長崎県と佐世保市が川棚町に計画する石木ダムの建設に反対し、水没道路の付け替え工事現場付近で座り込む住民ら

 長崎県と佐世保市が川棚町に計画する石木ダムの建設に反対し、水没予定地に住み続ける13世帯の家屋などを含む土地が、18日に明け渡し期限を迎える。19日以降、県は行政代執行で土地・建物を強制収用できるようになる。住民側は計画見直しを求めるが、県は「ダム建設ありき」の姿勢を崩さず、対立解消への道筋は見えない。

 石木ダムの建設は昭和50年に決まった。57年、県は座り込む反対派を排除しようと、県警機動隊を動員して土地の強制測量を実施し、対立が深まった。

 小学2年だった住民の松本好央さん(44)は「本当に家を奪われると思った。あの恐怖は忘れられない」と語った。移転対象のうち8割の54世帯は既に移ったが、残った住民とは、まともに交渉ができない状態が続く。

 県は建設の根拠として(1)佐世保市の水需要の増加予測(2)川棚町の治水対策で費用対効果が最も高い-などを挙げる。

 住民側は、佐世保市の人口は減少傾向で予測は誤りだと主張する。ダムの必要性を再検討する討論会を開くよう県に再三要請しているが、両者の話し合いは平成25年3月が最後だ。県は「ダムは必須という結論は変わらない。事業内容の『説明』ならいつでもする」との姿勢を変えない。

 22年から水没道路の付け替え工事が始まり、反対派住民は抗議して、連日座り込んだ。膠着(こうちゃく)状態の中、今年5月、県収用委員会が土地明け渡しを命じた。

 反対運動は激化し、7月に反対派住民の支援者を含む約200人が、中村法道知事との面会を求めて県庁に詰め掛け、庁内は騒然となった。

 中村氏は9月、約5年ぶりに住民との面会に応じた。約50人の参加者は建設中止を訴え「事業見直しをお願いします」と頭を下げた。中村氏も「継続して対話する機会を設けたい」と語ったが、話し合いの日程は未定のままだ。

 面会の約10日後、県はダムの完成目標を3年遅らせて令和7年度にすると明らかにした。その間に交渉を進めたい考えとみられるが「行政代執行も選択肢の一つなのは変わらない」(県担当者)。

 住民で川棚町議の炭谷猛さん(69)は「強制収用すれば県政の汚点として永遠に残る。勇気を持って立ち止まってほしい」と訴える。

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 石木ダム 長崎県と佐世保市が川棚町の石木川に計画する多目的ダム。計画では総貯水量約548万トンで、事業費は約285億円。当初の完成目標は昭和54年度だったが、今もダム本体は着工していない。県は平成26年に強制収用の手続きを開始。水没予定地の13世帯は今年9月に土地の権利を失い、県側は全予定地の用地取得を終えた。国の事業認定取り消しや工事差し止めを求める複数の訴訟が係争中。

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