4日に開かれたRCEP交渉の首脳会議で、参加国が目標としていた年内妥結は、2年連続で先送りされた。関税撤廃など重要分野でインドと中国などの対立が解消されなかったからだ。参加各国はインドとの交渉を続け、仕切り直しで来年の協定署名を目指すが、経済発展の水準が違う多国間の交渉の難しさが改めて鮮明になった格好だ。
「世界に誇れるRCEP協定の署名を2020年に実現させるべく、引き続き主導的な役割を果たす決意だ」。安倍晋三首相は、4日の首脳会議の席上、RCEPの実現にこう意欲を示した。
日本政府は昨年末に米国が離脱した環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)、今年2月には欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)を相次ぎ発効させた。9月には日米貿易交渉も最終合意。だが、これら大型の自由貿易協定に比べると、2013年に交渉を開始したRCEPは遅れが際立っている。
RCEP交渉を難しくしている要因の一つが交渉参加国の多さだ。参加国が多い分、互いの利害が衝突しやすい。さらに日本とEUとのEPAや日米貿易協定などと違い、RCEPは参加する16カ国の経済発展の度合いに大きな差がある。
このため、関税分野だけでなく、知的財産権の保護や電子商取引といったルール分野でも各国の思惑は大きく異なり、その分、妥協点を見いだすのが難しくなっている。
トランプ米政権の保護主義的な政策に対抗するため妥結のムードは高まっていた。だが、関税分野をめぐるインドとの交渉は厳しさを増しており、多国間での合意形成は難航の度合いを深めている。(バンコク 大柳聡庸)