日本高野連が設けた「投手の障害予防に関する有識者会議」の第4回最終会合が5日、大阪市内で開かれ「1人の1週間の総投球数を500球以内」とする投球数制限を盛り込んだ答申案をまとめて公表した。3連戦を回避する日程の設定も明記した。
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1週間の総投球数を500球以内とすることを柱とした提言に、日本の高校野球を抜本的に変える改革案は含まれなかった。内容を伴ったものにできるかは、日本高野連次第である。「野球がずっとメジャーなスポーツであり続ける保証はない。高校野球も時代に合わせて変わっていかないといけない」。有識者会議の中島隆信座長が指摘した危機感を共有できるか。変革の第一歩が踏み出されたことを評価しつつ、日本高野連の今後の対応を注視したい。
米国では故障予防のための投球数制限が浸透している。2014年に米大リーグ機構(MLB)と米国野球連盟が策定した各年代別のガイドラインに沿って、各州の加盟団体が1試合で1人の投手が投げられる球数の上限を決め、投球数に応じて次回登板までに必要な所定の休養日を定めている。それと比べて「1週間に500球以内」の総量規制は、なまぬるい感はぬぐえない。
1995年に日本臨床スポーツ医学会がまとめた「高校生は1週間で500球を超えないこと」との提言が根拠だが、1日おきに1試合150球を投げることも可能。「最初から守れない非現実的な制約をかけるのも難しい」(中島座長)との判断も働いた。
それでも、会議のメンバーで、新潟県高野連の富樫信浩会長は「投手を守るための議論が進んだことが重要」と前向きにとらえる。どんな基準であれ、導入することが大切という考えからすれば、そうだ。中島座長も「高野連は大きな組織で注目度が高く、野球界全体へのメッセージになる」と制限を設けること自体の意義を強調した。
ただ、今夏の選手権大会で1週間で500球以上を投げた投手はいない。3連戦回避の日程も準々決勝と準決勝、準決勝と決勝の間に休養日を設けており、既に実施済み。つまり、答申に合致することだけを考えれば、春夏の甲子園は「現状維持」でいい。さらに「週1日以上の完全休養日などの導入」については、「学期中は、週当たり2日以上の休養日を設ける」となっているスポーツ庁のガイドラインよりも劣る。それで、いいのだろうか。変革は効果を生まなければ、意味がない。(北川信行)