RCEP、インド孤立深める 日本は参加重視、中国は排除画策

 アジア太平洋地域に自由貿易圏を築く東アジア地域包括的経済連携(RCEP)交渉は、対中貿易赤字に危機感を抱き自国産業保護を優先させるインドが孤立を深めており、協定署名にも暗雲が立ちこめる。日本は、単に市場規模が大きいというインドの経済性だけでなく、対中国という地政学的な意味合いからも、インドを含めたRCEPの枠組みにこだわる構えだ。(バンコク 大柳聡庸、森浩)

 「私自身の良心は、私にRCEPへの参加を許可しない」。インドのモディ首相は、RCEP首脳会議の席上、こう不満を述べた。会議終了後、インド政府高官は今後の交渉に参加しない可能性に言及した。

 インドは対中貿易赤字が膨らみ、2018年度は約530億ドル(約5兆7700億円)に達した。幅広く関税が削減されれば赤字がさらに拡大しかねない。インドは関税削減を容認する条件として、製品の輸入が急増した際に緊急的に関税を引き上げる緊急輸入制限(セーフガード)を要求するが、中国などと合意には至っていない。

 これに対し、対米貿易摩擦が激化する中国は、米国抜きの協定の妥結に前向きだった。RCEP交渉が進展しないことに業を煮やした中国が、インドを除外した枠組みを他の参加国に打診したことさえあった。中国以外の一部の参加国にもインドへの不満がくすぶっているという。

 それでも日本政府を中心にインドを自由貿易圏に取り込むことの意義を各国に説明し、16カ国の枠組みにこだわった。

 安倍晋三首相は4日の首脳会議の席上、「RCEPの妥結が、日本が掲げる自由で開かれたインド太平洋構想の実現につながる」と強調。インドを含めた枠組みを構築することで、経済的にも軍事的にもアジアで存在感を増す中国を暗に牽制(けんせい)する狙いをにじませた。

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