主張

英総選挙へ 長引く混迷に終止符打て

 欧州連合(EU)からの離脱か残留か。英国民は今度こそ混迷に終止符を打ってほしい。

 英議会下院は、総選挙を12月12日に実施する特例法案を438対20の大差で可決した。10月末の「合意なき離脱」は回避された。

 新たな離脱案に基づくEU離脱の是非を最大の争点に、与党保守党と最大野党の労働党の2大政党が軸の対決となる。離脱、残留両派による事実上の国民投票の色彩が濃い。

 英国は、議会における合意形成がうまくいかず、2016年6月の国民投票から3年4カ月にわたって離脱の具体策をまとめられなかった。総選挙の実施決定を受け、ジョンソン英首相は「今こそ英国が団結してEU離脱を実現するときだ」と語った。

 「合意なき離脱」も辞さないとして首相に就任したジョンソン氏は17日に急転直下、EUと新離脱案をまとめた。だが、野党が多数の下院は同意せず、EUへの延期要請を強いられた。

 新離脱案をまとめた実績を背景に、少数与党の苦境を打開しようと総選挙に打って出た。勝利すれば新離脱案の議会承認を経て、年内にも離脱する道が開かれる。

 最近の世論調査では、ジョンソン氏率いる保守党が労働党に10ポイントから15ポイントの差をつけて優勢が伝えられるが、強硬離脱を唱える「離脱党」の追い上げもあって、盤石とまではいえない。

 野党労働党はまとまりに欠けている。コービン党首は「野心的な選挙戦を展開する」と述べ、EU残留を旗印に、総選挙に勝てば改めて国民投票を求める方針とされる。ただ、同党は一昨年の総選挙では「離脱」を公約にした経緯がある。今でも、EU関税同盟に残れば離脱していいという穏健離脱派を党内に抱えている。

 12月総選挙の結果、EU離脱が決まれば、英国は直ちに次の大きな課題に直面する。離脱後の激変緩和のための移行期間に、英国はEUとの間で自由貿易協定(FTA)を結ぶ交渉を始める。

 英政権は、日本や米国などともFTAを結ぶ方針だ。欧州以外にも幅広く経済的機会を求める「グローバル・ブリテン」構想を描いているからだ。

 離脱の場合、日本は速やかに英国とのFTA締結や英国の環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)加入に動くべきだ。

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