朝晴れエッセー

花から伝う笑顔・10月29日

私の好きな姉は優しくて花の大好きな人で、庭はいつ行っても四季折々の花が咲き、甘い香り漂う家でした。

そんな姉からがんの告知をされたのは余命3カ月のときで、すでにすべての臓器に転移しており、なすすべがないとのこと。このまま家で大好きな花を見ながら、と言うのです。

あまりに突然のことに私には心の準備もないまま悲しい日々が始まりました。姉のことを優先に考え、一日でも多く会いに行きましたが、帰りの車では信号が涙でかすみ、頭はボーとなり、平常心を保つのがやっとでした。

大切に育てられた庭木や草花は、そんな姉を知る余地もなく、美しく咲きほこっています。日を追うごとに歩くこともままならなくなり、ベッドで眠る日が続いても、花は時折甘い香りでカーテンを伝い、姉のベッドへと運んでくれました。でもすでに起き上がることさえできなくなり、姉の優しい言葉も笑顔も花には届けられなくなっていました。

そんな草花も姉の体を知ったかのように、庭の片隅の湿った風の中で、うつむき加減でうなだれているひまわりの姿を見るたび、胸が締め付けられそうな苦しく悲しい日々が続きました。願いもむなしく8月6日、姉は私にありったけの笑顔を残し旅立ちました。

今、姉から頂いたオキザリスの花が私の大切な形見花となりました。真っ白な花が咲くと、「私はここよ」と微風に揺れ、あの日の忘れられない姉の笑顔に出合えた気持ちになります。

茅●(=徳の心の上に一)得(かやとくえ) 69 神奈川県愛川町