朝晴れエッセー

だっちゃかねなぁー・10月28日

もともと故障の多い身体に追い打ちをかけるように、8月、9月と2回もぎっくり腰になってしまった。

やっと少し元気になってから買ってあった鉢植えの花をプランターに植え替えた。椅子を用意し、時々休みながらほんの少しの時間だったのに、ありがとう、とほほえむ花を眺める間もなくへたり込んでしまった。

そして思わず口から出た言葉は故郷、新潟の方言「私もだっちゃかねなぁー」だった。

若いときよく母が若者を励ますときに、「ホラ、がんばれ! なんだ、だっちゃかねなぁー」と笑いながら言っていたことがあった。あまりはっきりとした意味は分からなかったが、「だめだなぁ」とか「役に立たないなぁ」という意味くらいにしか受け取っていなかった。

高校あたりから、故郷の方言が好きになれず、父を「つぁつぁ」、母を「かぁ」と呼ぶのが恥ずかしくて、そのころから意識して呼んだことがなかった。方言もなるべく使わないように注意していた。子供が生まれてから即、「おばあちゃん」と私は母を呼んだ。

その母も、40代で建築業をしていた夫に先立たれ、4人の弟子たちと職人さんに助けられて疲れを知らない人のように働き通していた。70歳を過ぎてからときどき、「いやぁーこのぐらいでー。だっちゃかねなぁー」と自分を励ますように言っていたのを聞くことが増えた。

その母の写真の前で、私も「ホンに、だっちゃかねーになったども、もうちっと待っててね」と今朝も方言で語りかけている。

桑原キクエ 82 東京都練馬区